彗星のごとくバラエティー番組に登場し、瞬く間にお茶の間の人気者……チャーミングな美白のお姫様というキャラクターで一世を風靡した鈴木その子が突然の死を遂げて20年が経った。
彼女を芸能界に送り出した張本人は、実は浅草キッドの水道橋博士。彼は当時、どのような考えを持っていたのか。著書『お笑い 男の星座2』を引用し、在りし日の鈴木その子の素顔を紹介する。
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「その子ライト」の誕生
番組は深夜としては異例の評判を生み、急速に世間に浸透していった。
そして“美白のカリスマ”鈴本その子先生を生んだ「未来ナース」(編集部注:1998年4月から2001年3月までTBSで放送されていた浅草キッド司会のバラエティー番組)において、その後、多くのバラエティー番組が追従、継承していく特筆すべき発明があった。
業界で「キャッチライト」と呼ばれる照明は、強烈な照明を顔面に当てる事で色を抜き、顔色を白く飛ばすことである。
白光を顔面照射すればシワの谷間の影は消え、整形手術やメークでは隠しきれぬ小ジワ、シミなどが目立たなくなり出演者は実際よりも美しく、そしてなにより若々しく映し出される。
そのため、ベテラン女優の出演時には欠かせない裏技としてテレビ業界では日常的に用いられていた。
しかしながら、このテクニックは当時、世間一般には、口外厳禁の秘技でもあった。
ところが、俺たちは、その子先生に向けたキャッチライトと、それを持つ照明さんをあえてカメラにフレームインさせたまま放送する手法を「その子ライト」として、この番組で一般化したのである。
通常の放送では、技術さんである照明さんが、画面に「見切れる」つまり「映り込む」ことなど業界内から白眼視されて当然の失態であり、もちろん放送ではカットである。
だから最初のうちこれは、ある種の「騙し討ち」であり、その子先生には未承諾の映像であった。
几帳面に番組収録に参加する先生には一切その仕組みを教えないまま「その子ライト」は毎週毎週、映り込んだままオンエアーされ続けながら現場ではみんな白化(しらば)っくれていた。
「どうして、あたくしと照明さんまで一緒に映しているの?」
ところがある日、先生が気がついた。
「あたくし、この間、この放送を見た身内の人に聞いたけど、どうして、あたくしと照明さんまで一緒に映しているの? おかしいんじゃない? なんだか恥ずかしいわ~、他の女優さんとかに、そんなことしてないでしょ」
御機嫌斜めな様子が明々白々と伝わってきた。
だがここが正念場、♪守るも攻めるも白金の~とばかりに俺たちは玉砕覚悟で思い切った自白テロを強行した。
今まで黙っていたことを告白し、正直に、この手法の“狙い”を白状しようと腹を決めた。
そして俺たちは、お白砂の上の下手人のように緊迫した面持ちで清廉潔白に事の次第を敬白すると、その子先生は、一拍おいてこう復白した。