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バラエティー番組デビューとともに大ブームに

 こうして、その先生は“美白”を際立たせる光源を自ら持つ「恒星キャラ」として確立していったのだった。

 そして本格的にブームが到来した。

 その子先生の白い顔が白く輝くほどに、そのスケジュール帳は黒く埋め尽くされ余白すらなくなっていった。

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©iStock.com

 バラエティー番組デビューが、66歳であることを考えれば、“大化け”とはまさにこれに極まれり。

 そして、このバカ売れのために、

「鈴木その子先生が見られるのは『未来ナース』だけ!」

 俺たちが番組のなかで『少年ジャンプ』方式で合言葉のように連呼したこのフレーズは、歌舞伎の名科白のごとく、たちまち誰もが知るところとなったが、実際はかけ離れていった。

「誰なのスマップって?」

 '99年2月ーー

 あの国民的アイドルグループだったSMAPが『スマ×スマ』で俺たちの「その子の花園」のパロディ「スマ子の花園」を始めた。

「ちょっと、キッドさん!」

 いつものロケの途中、その子先生が改まって俺たちを呼んだ。

「ちょっと開きたいんだけど、あたくし知らないんだけど、誰なのスマップって?」

「SMAPですよ! いまや人気ナンバーワンのアイドルグループですよ。本当に知らないんですか?」

「スマップなんて知らないわ、嘘じゃないのよ。あたくし、テレビを見ないから本当に知らないのよ。今度、番組に呼ばれそうなの、だから予習してんのよ」

「知らないって、今、このコーナーのパロディを番組でもやってるんですよ」

「だから知らないのよ、見たことないんだもの。そのスマップとかもキッドさんと同じお笑いさん? 売れてるのかしら?」

「いやいや確かにお笑いというかバラエティーもやってますけど、俺たちとは人気も桁遠いで、スケールが違いますよ」

 これには俺たちも驚いた。

 この『トキノ』経営者の、「時の人」知らずぶりはなかった。

 もちろん頭脳明晰で、広い分野で博識な方ではあったが、俗世間の一般常識となると一転、世間知らずの白雪姫となった。

お笑い 男の星座2

浅草キッド

文藝春秋

2003年7月10日 発売