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安倍政権はなぜ“画期的”だったのか? 元自衛隊トップが「平和は作らなきゃいけない」と語る真意

元統合幕僚長・折木良一さんインタビュー #2

2021/03/11
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折木 それは、考え方というのはみんな、やっぱり幅があると思うんです。これは勉強すればするほど、田母神さんの方にいくか、そうじゃない方にいくか、どっちかだと思います。だから、その考え方自体がどうだ、ということはなくて、田母神さんは田母神さんで色々と蓄積してきた中で、ああいう考え方になってきたわけで。ただ、たとえばあのようなものが自衛隊のほとんどの考え方だとか、そういうことも全くないわけです。それは個人個人の主義主張だと思っていますね。

メディア対応で気をつけていた“2つのこと”

――次に、メディアの話も伺いたいです。折木さんは、新聞はどちらをとられていますか?

折木 私は基本、読売です。その他に、ちょっと気になったりすると日経を見たりしますね。

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――雑誌では、いつも読まれているものはありますか。

折木 新聞の特集などを読んでいて、例えば『Voice』にこんなことを書いている人がいるのか、と思ったら手帳にメモして、それを読んだりはしますね。あとは知り合いの人が書いていたり、興味のあるテーマがあれば。定期購読しているものはないですが。

――陸幕長や統幕長の頃は、毎週記者会見をやらなければいけないということで、メディアとの付き合いもあったと思います。そうした中で、印象深かったことや、気をつけていたことはありますでしょうか。

福島第1原発3号機への放水について記者会見する折木良一さんと北澤俊美防衛大臣(当時、2011年3月17日撮影) ©時事通信社

折木 基本的には、メディアの方と接触するのは、幕長になるぐらいまではそんなにないんですよね。だから、陸幕長になる前に1回だけ、記者会見の予行というか、練習をやらせてもらいました。博報堂か、電通だったかな、そこの人にも来てもらって。ヘリ事故があったという設定で、記者会見をやるんです。そこで厳しい質問が来たり、足を組むんじゃないとか、ご指導をいただいたりして(笑)。

 あとは、幕長になってから気をつけていたのは、自分の言葉で話すことですね。だから私は、ほとんどペーパーを持たずに記者会見に行って、自分の言葉でやりとりさせてもらったんです。それと、わからないものはわからない、知らないものは知らないと言う……つまり、嘘を言わないということですね。

どんな本を読んでいますか?

――退官後には、橋爪大三郎さんとの対談本(『日本人のための軍事学』)も出されていますが、他にも今の日本の言論状況をご覧になっていて、この人の考え方はしっかりしているな、安全保障に理解があるな、という方はいらっしゃいますか。

折木 そうですね……。安全保障というよりも、ものの考え方として、宗教学者の折口信夫さんが書かれる文章はものすごく面白くて。心の収め方とかリーダーシップとか、そういう面で参考にしていますね。

――あまり最近の本は読まれないですか。

 

折木 いえ、読むのは今どきの本が多いです。竹森俊平さんの『WEAK LINK』とか、あとはハラリの『21 Lessons』とか、面白かったですね。でもダメですね、歳を取ると。読んでもすぐに忘れちゃって(笑)。

――会田雄次さんの『日本人の意識構造』や、高坂正堯さんの『国際政治』なども、著書の中で挙げられていましたね。

折木 どちらも若い頃に読んだものですね。高坂さんは、私が20代、30代のときには、国際政治に関しては一番インパクトのある方でした。高坂さんの考えの一部が、今も私の頭の中にあるという気がします。