今日からちょうど8年前、第二次安倍内閣が発足しました(12年12月26日)。今年の9月16日に退陣するまで、総理大臣として歴代最長の在職期間を記録した安倍前首相。日本の安全保障体制に多大な影響を与えたその安倍政権とほぼ同時期に、自衛隊トップである統合幕僚長の立場にいたのが河野克俊さん(14年10月〜19年4月在職)です。
今年、46年間に渡る自身の自衛隊生活を振り返った書籍『統合幕僚長 我がリーダーの心得』(ワック)を出版した河野さんは、安倍前首相をはじめ、現場で接した政治家たちを自衛隊の中からどう見ていたのか。また、統幕長在任中に頻発した日韓問題への“率直な思い”とは――。近現代史研究家の辻田真佐憲さんが聞きました。(全2回の1回目/後編へ続く)
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安倍総理とは同学年だった
――まずお伺いしたいのは、統合幕僚長の任期についてです。通常、1、2年で交代するポストに、河野さんは異例の3回の定年延長を経て、4年半に渡って在職されました。これは歴代最長記録です。振り返ってみて、どうしてこんなに長く務めることができたとお考えでしょうか。
河野 それは、別に私が決めたことではないんですけれども、まあ、周囲の方が信任してくれたのかなと思っています。
――在職期間中の首相は安倍晋三さんですね。やはりその信頼が大きかったのでしょうか。安倍さんとは同学年でもありますが……。
河野 昭和29(1954)年生まれです。育った環境は全然違いますけど(笑)。この昭和29年というのは、上はいわゆる団塊の世代を含む方々で、激しく学生運動をやっていたんですね。われわれの世代にもその残滓はあったんですけど、それを冷静に眺めるようなところもあって。そういう意味では、団塊の世代真っ只中でもないし、他方で昭和30年生まれとも違うし、というトランジッションの世代でした。
だから、安倍総理と私は学校での接点などはないんですが、少なくとも見てきた時代背景には共通しているものがあるな、ということは感じていました。
統幕長と総理の関係性とは?
――安全保障に対するリアリスティックな考え方という点でも、相通ずるところがあったのでしょうか。
河野 そうですね。
――安倍さんは首相であると同時に、自衛隊の最高指揮官でもありました。自衛隊から見て、歴代の首相と比べてここが違ったという点はありましたか。
河野 一番は、安倍総理になってから、定期的に統幕長が総理に報告する場ができたことです。基本は1週間に1回ですが、北朝鮮のミサイル問題や災害派遣などがあるときは、その都度呼ばれました。安倍総理以前には、そうした機会すらなかったんです。毎週ブリーフを受けて、自衛隊の動きを頭の中に入れて、安全保障についての物事を決断する――安倍総理はそうした手法を取り入れた、戦後初めての総理だったと思います。
――他方で、安倍さん以外の総理大臣について、この人はわかってない、リアリズムがないなと感じた経験はありますか。