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「LINE問題」が、有識者総立ちで安全保障案件になるまでの解説

情報保全の在り方をきちんと考える機会になるのか

2021/04/08
note

アメリカには情報保全のルールがある

 製品でさえそうであるということは、個人に関する情報だってそうです。中国や韓国は信頼できないけどアメリカはまあまあ信頼できる理由は、単に尖閣諸島を日米安全保障条約5条で守ってもらえているからだけではなく、アメリカには情報保全のルールがあり、アメリカ政府もアメリカ企業もそのルールを順守している(風に見える)からです。先にも述べた通り、Facebookが情報漏洩したとなれば政府がバズーカ砲をもって調べ、消費者は巨額訴訟をFacebookに提訴し、議会公聴会にFacebookのザッカーバーグさんが呼ばれれば「悪いことはしてません」と証言するという、透明化に対する手続きは曲がりなりにも成立しています。

 たまにアメリカの情報部門(国家安全保障局;NSA)が日本の携帯電話を全件傍受できてたよとかいうネタが流れてきていましたが気にするな。

 そういう世界的な信頼できる国々ネットワークの一員として我が日本も入り、国益に資するようなサプライチェーンの一角を担うことで、個人に関する情報を守りながら安全保障上のリスクを下げようねということで我が国が提唱しているのがDFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)でありまして、各企業も可能な限り個人情報を守る仕組みを用意しながらも、安心できる国々で情報保全をしていこうよという話であります。

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国際的データ流通の中で信頼できる国、事業者を見極めよう

 逆説的には、国を超えてデータ流通をするな的な「データローカライゼーション」を否定することになるのですが、まあぶっちゃけ情報なんて守り切れませんからね。いたちごっこだし、日本には情報部門がないに等しいので、どうにかしろと言われても竹槍でB29落とせって言われてるのと大差ないんですよ。無理無理。なので、今回のLINE社の事件を皮切りに情報保全の在り方をきちんと考え、対応するべきところは対応し、国際的データ流通の中で信頼できる国、事業者を見極めて対応していこうよという流れになるわけでございます。

 その中でも、少なくとも現段階では中国とデータ面で「一緒にやろう」という議論など成立するはずもないし、韓国もあの体たらくなので、やはりアメリカやイギリス、欧州、インド、カナダ、オーストラリアあたりとやっていかざるを得ないのが日本の現状であろうと思います。

 そして何より、そういうこちらから信頼できる国々に対して、いまの日本がどう役に立つか、日本の役割は何であって、如何にして彼らの信頼を勝ち取り、相互に関係を築けるだけの良い法律体系と法執行ができるのか、考えないといけませんよね、という話でございます。

 データ資本主義全盛のいまの時代、日本人の個人情報こそが、我が国の安全保障上守り抜かなければならない最大の戦略資源なんですよ、旅順ですよ、ということはぜひともご理解いただければと存じます。

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「LINE問題」が、有識者総立ちで安全保障案件になるまでの解説

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