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「やり残したことはヤクルトでの優勝だけ」夢の実現まで青木宣親は“死なない”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/26
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「やり残したことはヤクルトでの優勝だけ」

 そして迎えた2021(令和3)年――。宮崎で行われた1月の自主トレでは新型コロナウイルスの濃厚接触者と認定され、いきなり出鼻をくじかれることとなった。そして、開幕直後には再び濃厚接触者となり、2週間の隔離生活を余儀なくされた。39歳となった青木にとって、度重なるアクシデントはどれだけ大きなダメージとなったことだろう。

 その青木が現在苦しんでいる。これまで、あまり見たことのない打率が続いている。打席内でいら立ちの表情を浮かべたり、無念そうにベンチに引き上げていく姿を見る機会も増えた。こんな青木の姿を見るのは初めてのことだ。おそらく、わずかなメカニズムのズレが生じているのだろう。隔離生活の影響なのか、長年のケガの蓄積なのかはわからない。

 それでも、あの青木ならばきっとすぐに復活する。そう信じているにもかかわらず、ついつい不安がよぎってしまうのはファンならではの宿命なのか。ヤクルト復帰後、改めて青木にインタビューをした。そのときに彼はこんな言葉を残している。

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「日本球界復帰のときも言いましたが、僕は11年に小川(淳司)監督の下で優勝を逃しています。志半ばのままアメリカに旅立ちました。あの時点で、僕にとっての日本の野球は止まっています……」

 そして、こう続けた。

「……それが、ようやく動き出した。僕の野球人生でやり残したことは《ヤクルトでの優勝》だけです」

 青木宣親にはまだやり残したことがある。夢の実現まで、青木は死なない。これまでがあまりにも順風満帆過ぎたから、今の青木の姿に動揺してしまうけれど、青木は青木だ。必ず打つ。磨き抜かれた技術に、さらに円熟味を増した経験値で、青木は必ず打つ。何も心配はいらない。だって、青木は青木なのだ。まずは、今夜の試合で日米通算2500安打を達成してもらって、景気づけしようじゃないか。もう一度言おう、青木は青木なのだ。

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