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ヤクルト・奥川恭伸プロ初勝利。金久保、今野、坂本…“初勝利グッズ”発売ラッシュの舞台裏

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/01
note

 東京ヤクルトスワローズ広報の三輪正義です。みなさんGWはいかがお過ごしですか? と言っても4都府県には緊急事態宣言が発出され、楽しいGWとはならないのが悲しいところですね。

 僕も海に山にと楽しく過ごしていた頃を懐かしく思い出して、後輩たちと組んでいる「潮干狩りLINEグループ」にあえてこんな投稿をしてみました。

「潮干狩りに行くぞ」(三輪)

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 するとすぐにあの男から返信があります。

「オンラインなら行けます!」(松本直樹)

 すかさずあの男も……。

「朝5時からなら行けます!」(山崎晃大朗)

 2人が行けない試合日にあえて誘ってみたのですが、決して断らない先輩思いの姿勢。

 “先輩の息子は先輩だ”と言って息子の面倒を見させる「畠山(和洋・2軍打撃コーチ)さんが行けないので楽しくできると思ったのに」

 と返すとなぜか既読スルーされましたが、僕はステイホームで脳内GWを楽しんでいます。

「文春野球コラムペナントレース2020」リーグ優勝ペナントを手にした筆者 ©三輪正義

神宮8連勝で迎えた無観客試合に……

 さて、ヤクルトスワローズもホームの神宮球場での主催ゲームは4月27日から無観客での開催を余儀なくされました。開幕阪神との3連戦で3タテを食らい1敗を挟んだあと、チームは神宮で8連勝で2位に浮上。それが無観客になった途端に2連敗です。これは、いかにファンの皆さんの声には出さない拍手での「声燕」が力になっていたかがわかります。やはり、プロ野球選手はお客様の前で野球をやってなんぼの商売、無観客試合は寂しいのです。

 球団経営も大変です。選手から球団の人間になってわかりましたが、球団の人や関係者が知恵を絞って、なんとかファンの皆さんに喜んでもらいつつ収益を上げようと日夜努力している姿があります。

 そんな僕も微力ながらお手伝いできることはないかと、スタッフと一緒に始めたのが『つば九郎テレビショッピング』。球団公式サイト内で3回開催しましたが、おかげさまで大ヒット。少なからず「赤字削減」に貢献できたのではないでしょうか(笑)。

 球団にとってグッズ売り上げは大事な収入源のひとつ。そういった意味で、開幕から「プロ入り初勝利」が相次ぎ、メモリアルグッズが販売されています。

奥川恭伸プロ入り初勝利は「グッズ的」にも嬉しい

 4月8日広島戦での奥川恭伸の初勝利はチームにも「グッズ的」にも嬉しい出来事でした。昨年の最終戦、そして開幕第3戦の野村克也元監督の追悼試合、そして燕プロジェクトで緑の燕パワーユニフォーム、3度とも違うユニフォームを着た3度目での登板での初勝利。僕は昨年の初先発の試合からカメラを持って奥川に密着していました。

 クラブハウスを出てくるところから、試合前のアップ、ブルペンなど普段テレビでは見られない表情を追いました。先日、その模様を公式YouTubeで公開(https://www.youtube.com/watch?v=WvDHFbihH_w)しましたが、去年の初登板から今年の初勝利まで、奥川の表情が変わっていくのはおわかりいただけたと思います。新人のときは何を聞いても「あ、はい」くらいしか受け答えできなかったのが、今や地元石川の「お国自慢」を聞くと「ガスエビです!」と僕の想像の斜め上を行く、おいしいコメントを放つほどになりました。

 声が小さいので、もう少し大きな声で喋ってほしいのですが(これ大事です)、いい意味でプロ野球の世界に、そして、ヤクルトスワローズという球団にも慣れてきました。去年までは「18歳の新人です」という雰囲気で、あまり感情を読み取れなかったのですが、今年は、「がんばります」と言ってグッと引き締める表情、ピッチングがうまくいかなくて、悩んだ表情、試行錯誤している顔をカメラ越しに見て「けっこう表情豊かなんだな」と感じました。

プロ初勝利をあげた奥川恭伸

「一つの勝利」でようやくプロのスタートラインに立てる

 去年の初登板、3月26日の阪神戦での敗北。奥川からは悔しい表情が見て取れました。今回の初勝利も5回5失点。「野手の人が点を取ってくれたので勝つことができた」と言っていた通り、決して納得のいくものではなかったと思います。

 でもその「一つの勝利」でプロ野球選手としてのスタートラインに立てたという充実感もあるはず。僕も1軍で初ヒット出たとき「あぁ、一応プロ野球選手としての記録は残したな」と思ったのは確か。僕と比べる必要はないですが、1勝するためにプロ野球に入ったのではありません。もっともっと勝ち星を積み重ねて、菅野や大野のように球界を代表する投手になれるはず。そんな成長の過程をカメラに収めてファンの皆さんに見ていただけるのはやはり、やりがいのある仕事です。

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