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「決まった!」ではなく「決まった。」 スワローズ村上宗隆のホームランを考える

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/07

 決まった。

 皆さん、今までの人生の中で心の底からこう思ったのはどんな時ですか?

 契約書にサインした時。
 プロポーズに成功した時。
 習字で最後のハネが上手くいった時。
 縦列駐車が一発で入った時。
 料理の最後にパセリを添えた時。
 リーチ一発でカン五筒(赤牌)をツモアガリした時。
 鼻の角栓が一気に取れた時。
 オセロで角から角の一列全てを裏返した時。
 ザラキで敵を全滅できた時。

 などなど、思い出すとキリがないぐらいいっぱいあるでしょう。

 来月6月8日にBS12さんで生中継されるロッテ対ヤクルト戦の副音声でゲスト解説をさせていただくことになったのですが、そのオファーをいただいた時が僕の最近の、

「決まっ……た……」でした。

 なので皆様、ぜひ6月8日は副音声でご視聴くださいね!

 と、自分の事はこれぐらいにしておくとして、今回はスポーツにおける【決まった。】の話をさせていただきたいと思います。

今なお語り継がれる、スポーツ名場面の【決まった!】とは

 たとえば、

 1998年、長野五輪のスキージャンプ団体で最後、船木和喜選手がK点超えのジャンプで着地した瞬間。

 2001年、近鉄バファローズ代打・北川博敏の逆転満塁優勝決定サヨナラホームランが左中間スタンドに飛び込んだ瞬間。

「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架橋だ!」の名実況が生まれた2004年、アテネ五輪で冨田洋之選手が最後着地した瞬間。

 2015年、ラグビーW杯の南アフリカ戦。ラストワンプレイでWTBカーン・ヘスケスの逆転トライが決まった瞬間。

 などなど。

 スワローズでいうと、1992年、日本シリーズ第1戦での代打杉浦享の逆転満塁サヨナラホームランとなる打球がライトスタンドに突き刺さった瞬間。

 といった、勝利が確定する【決まった!】がありますよね。

 ですが、これは【決まった!】であり、今回、僕が皆さんと共有したい【決まった。】ではないんです。

勝敗は決していないのに【決まった。】

 今回僕がテーマにしたい【決まった。】とは……。

 高橋尚子が2000年シドニー五輪のマラソンでサングラスを投げた瞬間。

 2009年WBC決勝。同点で迎えた延長10回2死2、3塁でイチローが林昌勇のシンカーをセンターに弾き返した瞬間。

 2013年、日本シリーズ第7戦の最終回。前日160球を投げ、この年初めて負け投手になった田中将大がマウンドに上がった瞬間。

 といったシーンに代表される、まだ勝敗は決していないのにそれを見た瞬間に勝利を確信してしまう【決まった。】なんです。

 この感情を見ている側に抱かせる要因はただ一つ。

 それは、その選手が持つ圧倒的なスター性です。

 シーズン中においてこの【決まった。】を自チームだけでなく相手チームにも思わせるためには、その行動を起こした選手の「スター性」が大きく左右すると思っていて、とくに一番それが現れるのがホームラン。

 そのスター性を持った選手が放つホームランでも、【決まった。】と思わせてくれるホームランは限られてきます。

 最近その【決まった。】ホームランを打ちまくっている選手がいます。

 それは阪神のルーキー、佐藤輝明。

 4月9日「横浜スタジアムは佐藤輝明には小さすぎた!」の名言を生んだ右中間場外に消えるホームランは、かなり完璧な【決まった。】ホームランでした。

 最近でいうと、5月2日の甲子園での阪神対広島戦でプロ入り初めての4番に座った佐藤輝が5回に放った逆転満塁ホームラン。この時点でスコアは5対3なので勝負はまだついていないのですが、結構【決まった。】ホームランでした。