昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

巨人・松原聖弥、香月一也、廣岡大志が出られなくても、それは「宝の持ち腐れ」ではない

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/07

 ホープの松原聖弥はスタメンを外れ、開花の兆しを見せていた香月一也、廣岡大志は2軍に落ちた。

 せっかく若い芽が成長して、もう少しで花を咲かせようとしているのに……と、もどかしさを覚えるファンも多いようだ。

 だが、読売ジャイアンツという球団の86年に及ぶ歴史のどこを切り取っても、「宝の持ち腐れ」という批判が顔を出すに違いない。宝の持ち腐れの金太郎飴だ。

20年前の巨人と今の巨人とでは明らかに違う

「江藤を獲ったあたりで醒めた」

 4年前、「元巨人ファンミーティング」という取材の皮をかぶった飲み会を催した際、元巨人ファンの参加者の間で異様に盛り上がった。1994年に中日から落合博満、1995年にヤクルトから広澤克実、1997年に西武から清原和博……と毎年のようにFAでスターをかっさらうなか、ダメ押しのように2000年に広島から江藤智を獲得。その時点で巨人に魅力を感じなくなり、巨人ファンをやめたという人が何人もいたのだ。

 とくにファーム戦まで見に行く熱心なファンのなかには「せっかく若手を応援しても、1軍でチャンスをもらえないから応援しがいがない」と巨人から離れていった人もいた。

 その後も巨人は「大物選手を獲りすぎ」と批判を浴び続けている。昨年オフもDeNAでFA権を取得した梶谷隆幸と井納翔一を獲得している。

 だが、今の巨人が「若手の墓場」と化しているかといえば、そうは思えない。

 ドラフト関連の取材をしている者から見ると、今の巨人は明らかに変わりつつあることがうかがえるのだ。

 今から3年前、巨人のファーム戦を見ていて、将来チームの顔になるような大器がいるとは思えなかった。ちょうど岡本和真や吉川尚輝が1軍に抜擢されたタイミングだったこともあるが、全体的に小粒に見えてしまった。

 他球団のスカウトのなかには「巨人は上層部の目がきついから大変なんじゃないかな」と同情的に見る人もいた。獲得した選手に欠点があれば、「なぜこんな選手を獲ったんだ」と重箱の隅をつつかれる。そのため、なるべく欠点の少ないバランスのとれた選手を多くドラフト指名することになる。その結果、スケールの大きな選手が育ちにくい循環になってしまっていた。

 その点で、今や球界の頂点に立つソフトバンクとは対照的だった。ソフトバンクは周知の通り、千賀滉大、甲斐拓也、石川柊太ら数々の原石を育成選手から登用して、開花させてきた。

 巨人がバランス型のドラフトをするのに対して、ソフトバンクは一芸型のドラフトを展開していた。

 ソフトバンクの福山龍太郎アマスカウトチーフは、こんなことを言っている。

「各球団10名前後のスカウトがいますが、100人が見て100人が『ドライチ』と思う選手は誰が見てもいい選手です。支配下のドラフト指名は複数のスカウトがいいと思う選手になることが多い。一方で育成ドラフトはスカウトの色が出ます。未熟な部分があっても、『この部分に光るものがある』と担当スカウトが評価すれば、ウチは育成選手として獲得していきます」

 近年で象徴的なドラフトだったのは、2017年だ。ソフトバンクは育成ドラフトで指名した6人中5人が支配下登録を勝ち取り、そのなかには周東佑京という大ヒットもあった。一方で巨人は育成指名した8人中7人が、わずか3年のうちに球団を去っている。

 しかし、原辰徳監督が就任した直後の2018年を境に、巨人のドラフト戦略は明らかに変わってきた。一芸に秀でた選手を数多く指名するようになり、指名傾向がソフトバンク寄りになってきたのだ。