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巨人・松原聖弥、香月一也、廣岡大志が出られなくても、それは「宝の持ち腐れ」ではない

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/05/07
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この二人が本格開花すれば、ソフトバンクと戦える

 2018年ドラフトでは、1位の高橋優貴以外は育成選手を含め9人が高校生。そのなかには今や先発ローテーションのキーマンになった戸郷翔征がいた。その後も2020年ドラフト5位の秋広優人に代表されるように、ロマンあふれる好素材を続々と獲得している。

 とはいえ、育成強化に本腰を入れてほんの数年で大きな成果を求めるのは酷だ。そこでもうひとつ編成面で注目したいのは、トレードの活性化である。

 原辰徳監督の第3次政権が発足した2019年以降、「飼い殺し」を避けるかのように数多くのトレードを敢行している。そこで獲得したのが香月や廣岡といった、今年20代半ばになる有望選手だ。今の巨人はどの年齢層にも、スケールの大きな若手がひしめいている。

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 また、競争もある程度フェアに行なわれている。昨季ようやく規定打席に到達した吉川尚輝ではなく、状態のいい若林晃弘が中心的に起用されているのがその証拠だ。

 今や地位を築いたベテランにしても、当然ながら若手時代があった。坂本勇人、丸佳浩、梶谷隆幸といった働き盛りの中心選手たちも、それぞれの道筋でチャンスをつかみ、スター選手にのし上がっている。プロ野球という世界は、そんな叩き上げの怪物が生き残っていく。若手は極めて厳しい競争のなかで、少ないチャンスをつかむしかない。

 とはいえ、いずれは松原や吉川尚が常時試合に出られるようになるのが、巨人にとって望ましいのではないか。エンターテインメント性だけを考えればの話だが。

 松原のとんでもない体勢でもヒットにしてしまう、型にはまらない打撃。ライトゴロを決めてしまう強肩。さらに仙台育英高3年夏にベンチ入りすらできず、甲子園のアルプススタンドで太鼓を叩いていたドラマ性。

 吉川尚の走攻守のスピード感。とくに二塁守備の美しい身のこなしだけで、入場料を払う価値がある。

 この二人が本格化してくれば、「打倒ソフトバンク」はお題目ではなく、現実感を増してくる。松原と吉川尚にとって、今は殻を破るための過渡期である。

松原聖弥

 昨年冬、松原にインタビューする機会があった。梶谷が巨人に移籍してくることについて聞くと、松原はこう答えている。

「吸収できるものは吸収していきたいですし、梶谷さんが来たからといって試合に出られないというのでは僕も成長できないので。ああいう選手を抜かして、やっとレギュラーになれるのだと思います。通らなければならない道なので、なんとか食らいついていきます」

 5月25日からセ・パ交流戦が始まる。DHが使えるということは、必然的に野手のチャンスが増えることを意味する。誰が千載一遇のチャンスをものにするのか。それは巨人の近未来を左右すると言っても過言ではない。

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