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客のセックスを覗き見るモーテル経営者が思いついた“実験”「これこそ、わたしが愛してやまない瞬間だ」

『覗くモーテル 観察日誌』より#2

source : 文春文庫

genre : ライフ, 読書, ヘルス, 人生相談

note

1000ドルが入ったスーツケース

 フースはテストのようすを簡潔にこう記述している。

 手はじめとして10号室のクロゼットに小型スーツケースを置いた。スーツケースには錠前をかけておいたが、その気にさえなればどんな人でも簡単に壊したり、こじあけたりできる安物の南京錠だ。宿泊客が小型のスーツケースをモーテルに置き去りにしていくことはしょっちゅうで、テストにもそんなスーツケースを利用させてもらった。

©iStock.com

 正直度をテストしたいような客がモーテルに到着すると、わたしは彼らを10号室にチェックインさせた。そして彼らが宿帳を記入しているあいだに、妻のドナに裏の自宅部分からフロントに電話をかけさせた。その電話で妻はモーテルを利用した客のふりをして、1000ドルの現金をしまったスーツケースを客室に置き忘れた、と話した。

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「なんですって、1000ドルものお金を入れたスーツケースをわたしどもの客室に置き忘れたのですか?」わたしは電話口でそうドナにくりかえす——到着したばかりの新来の客がフロントデスクで会話をきいているという前提で。ついでわたしはいったん受話器をおき、ふりかえって住居部分にいる妻に大声でたずねる。「ドナ、客が現金を入れたスーツケースを忘れていったらしいんだが、メイドからそういった報告はあったかい?」

 ドナはやはり大きな声で返事をする。「いいえ、なんにもいってなかったわ。忘れ物はなかったみたい」

 そのあとわたしは再度受話器をとりあげ、電話の向こうにいるドナにいう。「申しわけございませんが、お忘れ物は見つかっておりません。見つかりましたら、お客さまのご住所の控えがありますので、すぐそちらにお送りします」

 この特別な日、わたしはチェックイン手続中の陸軍中佐の前でこの芝居を演じた。宿帳の記入がすっかりすむと、わたしは中佐を10号室に割り当て、そのあと観察スペースへあがって中佐がどのような行動をとるかを観察しはじめた。