集団レイプ事件、監禁されそうになった少女、集団暴行事件、少女買春事件……。こうした事件の背景に、困窮が一つの要因としてあることは決して珍しくない。生活の困窮は、人々の自尊心が傷つけられやすい状況に置かれることにつながり、そこでは些細なきっかけで暴力が発動される。

 琉球大学教授として教育学を研究する上間陽子氏も、沖縄県で過ごした学生時代に、街が孕む“暴力”を身近に感じていたという。ここでは、同氏が現地少女の取材を通じ、沖縄にどのような暴力があり、どのようにその状況から抜け出し、自分の居場所を作り上げていくのかを記録した一冊『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版)の一部を抜粋。15歳のときに家を出てから4年間、売春でお金を稼ぎ、彼氏と暮らしてきた女性・春菜(仮名)さんの壮絶な実体験を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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集団レイプ、盗撮、暴行…援助交際と隣り合わせにある恐怖

  4年間仕事を続けて、その仕事に慣れてはきたけれど、仕事をすることのつらさがなくなることはなかったと春菜は話している。

 ひとつには、いつか客から暴行されるのではないかという怖さがあった。

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 ホテルでセックスをするという条件で待ち合わせたにもかかわらず、客のなかには自分の住む家に春菜を勝手に連れて行くひとがいた。客の家に行き、セックスをするということは、部屋にあらかじめ盗撮カメラがしかけられている可能性があったり、複数の人間が自宅に待ち伏せしていて、集団レイプに遭う危険性が高くなる。だから春菜は、客の家に行くことを断わっていたが、それでも車に乗せられて、気がついたら客の家だったこともあったという。

 このとき、お客さんのお家とか行ったことなかったから怖くて。なんていうの、「外でちょっと煙草吸ってこようね」っていって、自分の手にもってたの、煙草とか携帯とかだけだから、もって外に出てって。和樹に電話して、「これ、やばいよね? 帰ったほうがいいよね?」っていって。そのままバーってお家から出て行って。

 そのときは、機転を利かせて客の家から逃げることができた。だがその直後に、春菜はホテルで客から暴行を受けてしまう。

 お客さんと会って、ホテルに向かったら、ホテル入った瞬間に、「トイレ行く」って、相手に背中向けた瞬間に、思いっきり髪の毛、引っ張られたんですよ。

 ──わ、怖い!