1ページ目から読む
5/5ページ目

 生活費という名目で、和樹が使う1カ月のお金の総額が40万円近くになることを知った春菜は、愕然とした。確かにアパートの代金は和樹が自分のいとこに支払っていたが、それはせいぜい数万円程度に過ぎない。和樹は、自分が働いて得たお金はすべて貯金すると話していたが、その貯金も増えていない。春菜はそれに対していらついた。

 昼の仕事してるのに、結局、貯金するっていって、自分のお金(=春菜が稼いだお金)を生活費にまわしてとかだったから、なんか、「んー?」って思って

©iStock.com

 ──和樹が稼いだお金は、和樹が自分のお金として貯金してるってこと?

ADVERTISEMENT

 うーん、ふたりの貯金ではあって。(その貯金で)自分に自練(=自動車教習場)通わすためとか、アパート借りるってだったけど、(でも)そこまで貯まらなくて。結局、半年くらいで出て行く約束が、1年ぐらいいて、(いとこの)アパートに。それでも全然お金が貯まらなくて、それに対してとかも、いらついてて。

安定した仕事と自分の居場所を確保して別れを決意した

 ちょうどそのころ、春菜はマーマーから、自分の店で仕事をしないかという誘いを受ける。給料はそう高くないが、午前10時に出勤して午後8時までの勤務という「昼の仕事」であること、マーマーが同じ店にいて仕事を教えてくれることが春菜にとって魅力だった。春菜はすぐに、その仕事をはじめる。

 するとまもなく、春菜の父親からも連絡があった。父親の恋人が内地に移動することになったので、家の管理を春菜にお願いできないかという相談だった。春菜の父親は、「1週間に1回とか様子を見に来てもらって、それか、もしよかったら、春菜が住んでもいいよ」と春菜に声をかけた。

 春菜はずっと家に帰りたいと思っていた。でも「援助交際」をして生活してきたことをお父さんは知っており、「どうやって顔を合わせていいかわからない」と思い続けていた。でも、だれもいない家ならば、帰ることができる。春菜は、「すぐに帰る」と返事をした。

 そしてこのとき、春菜は和樹と別れることを決意した。春菜が別れ話を切り出すと、和樹は、「どうせ自分のところに戻ってくる」といった。春菜は和樹のいい方に心の底からうんざりして、「和樹をほうりなげた」。

【前編を読む】「別にだれでもいいよ、もう、遊ぼう」15歳の少女が家を飛び出し、売春で生活するようになった“ただならぬ理由”

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書)

上間陽子 ,岡本尚文

太田出版

2017年2月1日 発売