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「別にだれでもいいよ、もう、遊ぼう」15歳の少女が家を飛び出し、売春で生活するようになった“ただならぬ理由”

『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』より #1

2021/05/27

 貧困の連鎖は日本社会における大きな課題の一つといっても過言ではないだろう。そんな貧困の問題において、沖縄県の相対的貧困率は約3割と全国平均のおよそ2倍の高い割合であることが明らかになっている(政府調査による)。

 琉球大学教育学研究科教授の上間陽子氏も、学生時代に貧困が招いたと考えられる種々の“暴力”を目の当たりにし、「いろんなおうち」があることを肌身で感じてきたという。ここでは、同氏が自沖縄で暮らす少女たちのリアルな日常をフィールドワークで記録した一冊『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版)の一部を抜粋。15歳のときに家を出てから4年間、売春でお金を稼ぎ、彼氏と暮らしてきた女性・春菜(仮名)さんの証言を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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◆◆◆

「自分の居場所がどこにもない」家から連れ出してくれるひとを求めて

 14歳のときに、春菜に初めて恋人ができた。年上の恋人は、バイクでどこかに連れ出してくれたし、恋人の家は、春菜がいつまでもいることができる場所だった。だがそれが父親の恋人との喧嘩の火種となってしまう。それからは、春菜がすることすべてが、東京にいる父親につつぬけになる(編集部注:春菜の父親はこれまでに三度離婚し、その度に春菜が一緒に過ごす家族は変わった。中学時代は見知らぬ女性が父親の恋人となっており、父親は東京に出稼ぎに出ていたため、春菜は見ず知らずの女性と生活をしていた)。

 その後、春菜は自分の恋人と別れることになった。恋人と別れたこの時期、春菜はご飯を食べることもできなくなり、ずっと泣きながら過ごしている。春菜にとってその失恋は、自分の居場所が、もうどこにもないと感じられるほどの喪失感だった。

 それでも自分の家にいることができない春菜は、インターネットの掲示板「中狂連合」を使って、自分を家から連れ出してくれるひとを求めるようになる。

 このときもう、最初に付き合ってたひとがめっちゃ好きで、フラれて。もうなんか、「どうでもいいや」ってかんじで、結構遊びまわってたわけ(中略)。

 ──その遊びまくってた仲間っていうのも、なんか隣の中学の、とか?

 ううん、じゃなかった。「中狂(連合)」でアシカメー(=足代わりをつかまえる)。(中略)

 ──そのときは別に怖くなかった?

 怖くなかった。「別にどうでもいいよ」みたいな。