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「別にだれでもいいよ、もう、遊ぼう」15歳の少女が家を飛び出し、売春で生活するようになった“ただならぬ理由”

『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』より #1

2021/05/27
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 お父さんの彼女と喧嘩したときに、なんか自分からしたらそのときは、彼女は、「アカの他人なのに、なんで、あんたにいわれなきゃいけないの?」っていって。で、お父さんに電話して。「おまえ、何がしたい?」っていわれて。「別に何もしたくない!」っていって。「お父さんの人生のなかで、春菜がこうやって生まれてきたから、お父さん、こんなして、春菜が沖縄にいるから生活しないといけないと思って、仕事してるんでしょう?」って。「嫌々ながら、いつも内地に行くさ」っていって。「だったら、春菜があなたの人生のなかから消えた方が、気が楽になるんじゃない?」っていって。「そしたら春菜のことも考えないでいいし、別に彼女のことだけ考えて、沖縄で仕事したらいいさ」っていって。「だから、いままでごめん、心配とか苦労かけてごめんなさい。だからもういいよ、バイバイ」っていって、ぶちって電話、切って。

 父親との電話のあと、春菜は家を飛び出した。

©iStock.com

身近にいた男性を好きになっていた

 それから春菜は、客とセックスをしてお金をもらう生活をはじめる。ひとりで生活していかなくてはならないのだから、もう客を選り好みすることはできない。

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 春菜が家出をすると、近所に住む春菜の友だちの薫(かおる)も家出した。春菜と薫はどこか住む場所がないか和樹に相談し、和樹は格安で借りることのできる民宿をふたりに紹介してくれた。その民宿は出入りも自由で、まだ15歳の春菜と薫がそこに住んでいる理由を詮索されることもなかった。春菜と薫は、和樹の紹介する客と定期的に会うようになる。

 そんな生活がはじまってからしばらくして、春菜は和樹のことをだんだん意識するようになっていく。

 やっぱり一緒にいたらっていうか、最初、和樹の友だちと付き合ってたけど、なんかこのひとにフラれて、っていうか別れて。薫とか一緒に遊んでた友だちが、「和樹、いいんじゃない?」みたいな。

 ──いわれたんだ?

 なんかいわれたら、人間って意識してしまうから。和樹だけ、ずっと見てて。「あ、好きなのかな、これってー」みたいな。

 ──あはは(笑)。

 っていうのが(笑)、たぶん1、2カ月くらい、ぷーらぷーらしてて(=揺れて)、気持ちが。

 ──うん。うーん。

 うん、で、ショッピングモールで遊んでて。この薫に、「どうすればいいのかな?」みたいな。「この気持ちいうべき?」みたいな。で、「春菜、もうとりあえずメールでいうから帰ろうねー」って(薫に)いって。で、帰ってメールで。そのときかーずって呼んでたから。「かーずあのさー」みたいな。「話があるんだけど」「なあに?」、みたいな。「春菜、好きだわけ」、みたいな。「つきあってー」みたいなこといったら、「ごめん、いま忙しいからあとから連絡する」みたいな。

 ──うふふふ(笑)。