──最初の彼氏さんと別れたのが、もう。
やばかった。もう、やばかった。1カ月……約1カ月ぐらいご飯もまともに食べられなかったし、毎日泣いてて(中略)。別れたとき、もう自分がちょっと精神的に食らいすぎて、「毎日、大丈夫ねー?」とかだったけど、ふと立ち直って遊びはじめたときは、ただ「元気になったんだ」と、思っただけだったと思う。「自分はもう別にだれでもいいよ、もう、遊ぼう、はいー」みたいなかんじだったから。
──別に(悲しみが)終わったってかんじでもなく。元気になってるわけでもなく。
うん。「どうでもいいよねー」みたいな。
春菜はただ、自分を家から連れ出してくれるひとを求めた。そして、自分を連れ出してくれたひとに求められると、セックスをした。
19歳のふりをして援助交際
春菜がインターネットで探した年上の男性たちと会っていたころ、ときどき遊んでいたひとつ年上の和樹から、春菜は「援助交際」をすすめられるようになった。和樹はインターネットの掲示板に女性のふりをして客をつのり、売春を成立させる「打ち子」をしてお金を稼いでいた。春菜は、客とセックスをしてお金をもらうことは怖いことだと感じていたので、その話を断わった。すると和樹は、客のなかにはセックスをする目的以外の客もいると説明し、口を使って射精させるという「Fオンリー」の客を春菜に紹介した。春菜は客に会う。
──歳は何歳? オッサン系?
でも30。30半ばとかそのぐらい。
──ふーん。最初とかって怖いし、話とかも難しくなかった?
怖かった。会うまでは怖かった。だけどたぶん、いいひとだったんだと思う。しゃべってても別に嫌なかんじじゃなかったから。でもやっぱり、「歳いくつ?」とか聞かれるから。
──絶対いうね!
絶対、だーる(=そうだ)から。だから自分の頭のなかではこの西暦と干支とか、こんなの全部、頭にインプットして。
──18歳に設定?
自分、19でいってました。19設定で。
──で、和樹は、客を見つけるときに、ほんとうにもうじゃあ、19設定で?
うん、全部全部。このサイト自体がやっぱり18歳以上ってなってる。けどやっぱり未成年とか、いっぱいいるから。中学生とか、いま、普通にいるっていうから。
客の車を降りたあと、客からもらったお金を確かめると、最初の条件だった7000円に加えて、5000円のチップが入っていた。
そのお金を手にしたとき、これで家を出ることができると春菜は思った。もしもひとりでお金を稼げるのならば、お父さんが勝手に連れてきた恋人と暮らす必要はない。
そして春菜は、父親と大げんかをする。