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「照ノ富士は今場所に全てを懸けていました」“元安美錦”安治川親方の7月場所総評

けっぱれ! 大相撲――2021年7月場所

note

横綱への「挑戦」から「攻略」へ

 白鵬、照ノ富士、貴景勝の3人を中心に場所が進んでいくと思った矢先、貴景勝が頸椎を痛めて休場。頭から当たっていくだけに、とても心配です。まずはしっかり治療に専念してほしいものです。

 優勝争いは早々に白鵬と照ノ富士に絞られました。

 横綱戦を見ていると、横綱に対しての若手の向かい方が少し変わってきたように感じています。たとえば初日に白鵬に当たった明生は、負けて悔しさを滲ませていました。7日目に横綱と対戦した翔猿は、立ち合いに距離を取り、なんとか突破口を見出そうとしていました。

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 横綱戦は「自分の今持っている力を全部出そう」とし、勝敗は二の次。「横綱に自分の力がどこまで通じるか」が目標になり、それで勝てれば自信になりますが、負けても「まだまだ通用しないか……」と納得してしまうもの。

 私もそうでしたが「倒しにいくぞ!」という姿勢になるまで結構な時間がかかったものです。ですが、「倒そう!」という気持ちで臨んでいく力士の取組は、これはこれで面白い。横綱への「挑戦」から「攻略」へ――。

 どんどんと向かっていってほしいものです。

14連勝同士の対決

 迎え撃つ白鵬は、本来の相撲ではないものの、勝利を重ねていく。関脇高安、大関正代に対しては、とにかく勝ちにいきました。色々な意見が上がっていますが、勝ちへの執念は凄まじく、14連勝としました。

 一方、照ノ富士も先場所以上に厳しい相撲で相手に相撲をとらせず、万全に勝ち星を重ねて14連勝。ほぼ横綱昇進を手中に収め、残すは全勝優勝だけ。いい緊張感を保ち、穏やかに決戦の日、千秋楽を迎えました。

 土俵上の厳しい表情とは打って変わった穏やかな表情を見たい方は、私のTwitterを是非ご覧下さい(笑)。

 誰がこの2人を倒すのかと期待していたのですが、誰もが倒せずに、ついに千秋楽全勝対決。

 さあ、いざ決戦。

 白鵬が横綱の意地を見せるのか、はたまた照ノ富士が横綱になるために超えていくのか。