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《まるで異世界》なんでこんなに地下深くに!? 群馬県の山中に“ポツン”…幻想的すぎる「日本一のモグラ駅」を探索する

2021/07/31

genre : ライフ, , 社会

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日本一の「モグラ駅」

 実際に到着してみると、駅舎は立派で大きく、広い駐車場には何台か車が停まっていた。しかし周りには民家も売店もなにもなく、あるのは廃墟になった食堂が1軒あるのみだ。

駅前に建つ廃墟、菊富士食堂
谷川岳をイメージした駅舎

 駅に近づくと思いがけず、中から人の声がする。どうやらここは、近くにある谷川岳への登山客が多く利用するらしい。

「ようこそ日本一のモグラえき 土合へ」

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 駅舎の入り口に大きく書かれたモグラ駅とは、ホームが地下70mの位置にあることからだ。さらにホームまでは24段の階段と連絡通路を渡り、さらに462段の階段を下った合計486段の先にあり、所要時間は10分かかるという。

土合駅入口

 なぜこのような駅構造になったのか。大正時代から工事が始まり、昭和6年、ここに線路が通ったときは地上にある単線のみだった。昭和40年代、路線を複線化する際トンネルが作られ、地中にあるホームが誕生した。

いざ駅のホームへ……

 ホームへと続く道はどんな雰囲気だろう、地下へと続く階段はどれほど疲れるだろう、誰かほかにいるだろうか、本当に10分もかかるのか、怖いのかそれとも平気なのか…疑問と期待、不安と緊張、様々な思いが入り混じる。駅舎内にはキレイなトイレと自動販売機があるのみで、駅員はいない。はやる気持ちを抑えきれず、誰もいない改札を、心躍らせながら通り抜けた。

乗車駅証明書

 ホームは長岡方面行きの1番線と、高崎方面行きの2番線に分かれている。2番線はもともとあった地上駅であり、改札からそれほど遠くはない。目当ては地下にあるホーム、長岡方面行きの1番線だ。

土合駅連絡通路

 まずは連絡通路へと進む。経年劣化で薄汚れたコンクリートの通路、サビで覆われたドーム型の屋根、無機質で殺風景な渡り廊下の窓からは、美しい自然とキレイな川が目に映り、その対比がこの上なく素晴らしい。すでにこの非日常的な空間に胸が高鳴るが、ここはまだ序章に過ぎない。