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巨大地下街、混在する駅名、オカルト怪談…“超難度ダンジョン駅”「大阪」には何がある?

大阪、梅田、西梅田、東梅田…「大阪」の“それは一体どこなんだ問題” 前編

2021/08/30

genre : ライフ, 歴史, , 社会

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なぜ「大阪」ではなく「梅田」を名乗ったのか

 なぜ阪神と阪急は大阪駅ではなく梅田駅を名乗ったのか。推察すれば、国鉄は全国ネットワーク。都市の玄関口である以上、都市名を堂々と名乗るのが筋だ。反対に、私鉄の役割は地域輸送だ。都市の名前を名乗っても意味はなく、むしろ地域名の方が大切だ。

 大阪駅の開業から四半世紀ほどをかけて徐々に大阪の玄関口としての形が作られて、そこに阪神・阪急という私鉄もやってきた。1929年には阪急梅田駅の駅ビルに阪急百貨店が開業。世界初の私鉄ターミナル百貨店である。次いで阪神も阪神マートという直営店を駅構内に開業(後の阪神百貨店)する。こうして、いつしか北の外れの不毛の地に生まれた大阪駅界隈は、“キタ”の中心としての地位を確立していった。

1948年(国土地理院の航空写真より)
1976年(国土地理院の航空写真より)
2006年(国土地理院の航空写真より)

 そんな中、大阪駅のすぐ北側の広大な空き地に生まれたのが、梅田貨物駅であった。最初は貨物もお客もひとつの大阪駅で扱っていたが、大ターミナルがそれではさすがに追いつかない。そこで貨客分離、つまり貨物駅を分離して隣接地に梅田貨物駅を設けたというわけだ。この梅田貨物駅、堂島川につながる水路まで掘られていて、大阪の貨物の玄関口としての役割を果たしていた。

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もうすぐ「もうひとつの大阪」も開業へ

 と、このあたりで一旦歴史の旅から現代に戻ろう。大阪駅の連絡橋口からルクア方面に歩く中で見下ろした工事現場の敷地は、この梅田貨物駅の跡地である。戦後になって梅田貨物駅は少しずつ縮小されていき、2013年には完全に廃止された。大ターミナルのお隣の一等地に広大な空き地が生まれたということで、目下大再開発の真っ最中。そしてこの場所に、新たにもうひとつの大阪駅が開業することになっている。

「梅田スカイビル」を正面にすればそこには巨大な開発地帯が

 梅田貨物駅跡地を含む区間には、梅田貨物線という東海道線の支線が走っている。貨物線と呼ばれてはいるが、新大阪方面から大阪駅を経由せずに西九条方面に向かうことができるいわば短絡線だ。そのため、例えば関西国際空港に向かう特急「はるか」などがここを通っている。ただ、キタの中心地たる大阪駅をパスしてしまっているのも事実だ。

遠くに見えるのは街のど真ん中にたたずむ「HEP FIVE」の観覧車

 帰国の前に梅田でHEP FIVEの観覧車に乗って551の豚まんをお土産に買って、と思っている外国人観光客の皆様。彼らは、「はるか」に乗ろうとするとわざわざ新大阪駅に行かねばならない。すぐ近くをピューッと「はるか」が通過しているのに、それはあまりにむなしい。

 そこで、2023年には梅田貨物駅の跡地(の地下)に新たにホームが設けられ、新たな大阪駅(仮称:北梅田駅)として開業することになっているのだ。さらに2031年には大阪市街地の中心部を南北に抜けてやってくるなにわ筋線も乗り入れる。そうなると、南海の関空特急「ラピート」もやってくる。いつだったか取材した、どこでもドアのようなホームドアも設けられるなど、最先端の技術を取り入れたまさに大阪の顔のような近未来的な駅になるのだとか。