大阪・梅田の地下街の待ち合わせスポットとして知られる「泉の広場」。ここで売春をしていた当時17~64歳の女性61人が、売春防止法違反で大阪府警に現行犯逮捕されていた。府警は令和元年から2年にかけて約1年がかりで捜査していたという。

 大都会の真ん中で、何が起こっていたのか――。この事件を取材して、文春オンライン上に「日本色街彷徨 大阪・泉の広場」として公開したのが、『娼婦たちから見た日本』(角川文庫)などの著作で知られるノンフィクション作家・八木澤高明氏だ。「文春オンラインTV」(4月29日放送)では、八木澤氏にインタビューを敢行し、原稿に書ききれなかった出来事を語ってもらった。

「泉の広場」の近くにあるラブホテル街 ©八木澤高明

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ホテルに行って「お前、全部証拠はあるぞ」と逮捕

――取材で話を聞いた、「泉の広場」に昨年8月まで立っていた杏梨さん(30)。彼女の友人は逮捕されたそうですね。

八木澤 昨年8月に逮捕されました。この逮捕が、杏梨さんが広場にいかなくなった理由にもなりましたね。友人の本業はソープ嬢。実家暮らしで生活費に困っている雰囲気じゃないのですが、服を買ったり、自分で遊ぶお金のために広場で売春していた。売春への垣根が低くて、ちょっとお金が欲しいと簡単に飛び越えていっちゃうという感じだそうです。

――友人はどのように逮捕されたのですか?

八木澤 マッチングアプリを使った捜査でした。友人が客だと思ってやり取りしていた相手が警察だったんです。1カ月ぐらいアプリでやりとりして、「泉の広場」でその警察の人と会って、ホテルに行って、「お前、全部証拠はあるぞ」と逮捕された。アプリでお金の話もしていましたから、言い逃れできないですよね。

――警察は「泉の広場」で張り込みもしていたわけですよね?

八木澤 そうです。ただ、杏梨さんいわく、警察かどうかは見れば分かると。立ちんぼを買いに来る人はガン見してくる。女性をジーッと見てくるらしいんです。だけど、警察の場合は視線が動く。彼女たちはずっと居るから、イレギュラーな人が来たら「なんか雰囲気違うな」と分かるんですね。

取材に応じた杏梨さん ©八木澤高明

――杏梨さんは週何回ぐらい立っていたんですか?

八木澤 月によりますが、工場勤務を終えてから週3日ぐらい行っていたようです。行けばほとんどお茶を挽くことはなかった、つまりお客さんがつかない日はなかったと言っていました。

――現在、杏梨さんは広場に立ってないそうですが、工場の収入だけで生活されているんですか?

八木澤 アプリはまだやっているみたいですね。アプリの中で特定のお客さんがついたそうで、月に2~3人会うと言っていました。新型コロナの影響で、工場の収入が半分以下になってしまって生活できないので、体を売らざるを得ない状況がいまだに続いているそうです。