文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

「ドラフト指名は正直厳しいかなと…」梶浦宏孝七段が語ったABEMAトーナメントの舞台裏

「ドラフト指名は正直厳しいかなと…」梶浦宏孝七段が語ったABEMAトーナメントの舞台裏

梶浦宏孝七段インタビュー #1

2021/09/04
note

「自分の中では、居飛車と振り飛車は“右利き”と“左利き”くらい違いますね。」

――少し話を変えますが、梶浦さんは将棋連盟の囲碁部部長を務められています。またボードゲームカフェ通いが趣味だそうですが、将棋と囲碁も含めて、ボードゲームが全般的にお好きなのでしょうか。

梶浦 昔から考えるゲームが好きでした。ボードゲームは幅広くやっています。カフェに行くと店の方から教わるのもいいですし、そこにいる別のお客さんに誘われてやるのも楽しいです。いずれも親切に教えてくれるので、それがボードゲームカフェのいいところです。このあたりは将棋の普及にも似ているかもしれません。自分はボードゲームの勝ち負けにはこだわらず、新しいゲームを楽しもうという意識のほうが強いです。カフェで初対面の人と楽しむというのは、将棋でいうと将棋道場に行くようなものなのかなと思います。

 

――カフェ通いの結果、ハマったゲームはありますか。

ADVERTISEMENT

梶浦 最近ですと、「ツォルキン」というゲームです。マヤ文明の暦をモチーフにしたもので、だいたい3~4人で1時間ほど楽しめます。

――ちなみに、師匠の鈴木九段は麻雀の強豪としても知られていますが……。

梶浦 自分には向いていないと思うので、やっていません。奨励会に入るとき、師匠から「麻雀はやめておけ、自分はそれでだめになった(笑)」と言われました。そのわりには、妙に楽しそうに話すのですが(笑)。

――鈴木九段は振り飛車党ですが、梶浦さんは影響を受けなかったのでしょうか。

梶浦 入門した当時は振り飛車党でしたが、1級の頃に中々初段へ上がれず「居飛車をやってみようか」と考えてからは、現在に至っている感じです。もともと、入門当時に居飛車も指せるようにとは師匠から言われていたのですが。今でも振りたくなる時はありますが、ちょっと自分には「振り飛車力」が足りないですね。

――これは私の偏見かもしれませんが、プロ棋士の中でも振り飛車党の方は「自分は振り飛車を指す」という強いこだわりを持っているのに対して、居飛車党の方は、勝率が高い戦型を選ぶことに重きを置いて、そういう意味ではそこまで作戦にこだわっていないと感じます。そのような居飛車党の方が、たまに飛車を振るというのはどのような時なのでしょうか。

梶浦 基本は振りたいという気持ちが生じたから、振っているんじゃないですかね。対戦相手を見て作戦を変えるのは器用な人だと思います。自分の中では、居飛車と振り飛車は“右利き”と“左利き”くらい違いますね。相居飛車の中でも矢倉と角換わり、相掛かりは違いますが、そこまでの違いは感じません。

 

――とはいえ、プロ棋士は奨励会を突破した以上、振り飛車をある程度は指しているはずだと思うのですが(2階級差の相手で、香落ちの上手を持つときは基本的に飛車を振る)。

梶浦 プロの振り飛車には独特の呼吸があると思います。指せるようにはなりたいですが、まだ手が付けられていないのが現状ですね。 

写真=杉山秀樹/文藝春秋

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。

「ドラフト指名は正直厳しいかなと…」梶浦宏孝七段が語ったABEMAトーナメントの舞台裏

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春将棋をフォロー