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王位戦リーグ最終戦で羽生善治九段と激突 佐々木大地五段「チャンスを逃したくない」

佐々木大地五段インタビュー

2021/05/06

 最年少タイトルホルダーが誕生した2020年、その年末時点で藤井聡太二冠と公式戦を複数局指し、かつ勝ち越している棋士は数少ない。その一人が佐々木大地五段である。小学生低学年で全国優勝の経験があり、プロになってからも常に高勝率を挙げているが、その棋歴は順風満帆ではなく、むしろ波乱万丈であったと言ってよい。

 将棋に打ち込んだ佐々木少年は2004年、小学校3年生の夏に倉敷王将戦(低学年の部)で優勝する。だが同年の12月に突然の病魔が襲う。「拡張型心筋症」と診断され、一時は生命も危うかった。

 そんな佐々木五段は、王位戦の挑戦者決定リーグにて最終局を羽生善治九段と戦う。勝てば藤井聡太王位への挑戦が現実味を帯びてくる大一番だ。文春将棋ムック「読む将棋2021」に掲載されたインタビューから、一部を抜粋して掲載する。

佐々木大地五段 1995年長崎県生まれ。2016年四段プロデビュー。次点を2度獲得してフリークラスからのデビューだったが、1年以内に順位戦参加の資格を得る。居飛車党で、相掛かりを得意とする。師匠は同じ長崎県出身の深浦康市九段。師匠と共同でツイッターを運用する

振り返ってみると、全然勉強していなかった

佐々木 福岡県の病院に4ヶ月ほど入院しており、その間に小学生名人戦の長崎県予選がありました。当時は県予選より先の西日本大会をどう戦うかということを考えていたので、県予選に出ることすらできなかったのは悔しかったですよ。ですが入院が長期化したので、福岡の病院に住民票を移すと、福岡県予選には出られることがわかりました。無理を押して出場し、結果は優勝。その後の西日本大会には病状的に外出すら厳しい状況で参加できなかったのですが、この予選をきっかけに体調が回復していきました。医者の先生にも不思議だと言われましたね。当時は将棋を指したいという気持ちしかなく、その一つの希望があったのが大きかったのでしょうか。

 元気を取り戻した佐々木少年は前にも増して将棋に打ち込み、ついに2007年の第32回小学生名人戦で西日本大会を突破し、ベスト4へ進出した。小学生名人戦はベスト4から東京で収録が行われ、NHKで全国放送される。第32回大会に参加して、後にプロ棋士となったのは佐々木の他に近藤誠也七段、増田康宏六段、古森悠太五段、本田奎五段、黒田尭之五段、山本博志四段、冨田誠也四段がいる。

佐々木 準決勝では近藤君と当たったんですが、惨敗でした。何を思ったのか大一番で中飛車を採用していました。それ以前に振り飛車は遊びでは指していましたが、真剣勝負で指したのは初めてのはずです。よほど緊張していたのかなと思います。

 

――2008年の9月に6級で奨励会に入会されています。奨励会試験の受験以前から、家族全員で対馬から横浜に引っ越したそうですが、これは背中を押してくれたのでしょうか。それとも、プレッシャーに感じましたか。

佐々木 やはりプレッシャーはありました。でも、やっぱり小中学生ですから、事の大きさはつかめていなかったんですね。振り返ってみると、全然勉強していなかったなと思います。