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特集観る将棋、読む将棋

「連続王手」「リュックサックひとつで…」藤井聡太二冠はなぜファンの心を震わせるのか

観る将アワード2020/2021 #1

2021/04/25

 将棋界では年度末に将棋連盟が主催する「将棋大賞」が発表されて、「最優秀棋士賞」や「最優秀女流棋士」などが表彰されている。

 こういった将棋界の1年を振り返る企画を「観る将」の視点で行ったらどうなるだろう――。そんな思いで昨年度から始まった「観る将アワード」、今年は「名局」「最優秀棋士」「最優秀女流棋士」「最優秀解説者」「最優秀聞き手」「ベストエッセイスト」「ベスト棋譜コメント」の7つの部門に、130名を超える方々から熱い投票をいただいた。

 今年も審査員を務めるのは深浦康市九段と遠山雄亮六段。

 まず各部門のアンケート結果を発表し、それを踏まえて両先生に大賞を決めていただいた。

昨年に引き続き、審査員を務めた深浦康市九段(左)と遠山雄亮六段(右) ©文藝春秋

「観る将アワード2020/2021」では、審査の模様をジュンク堂書店池袋本店からオンライン配信したが、本稿ではイベントのときに紹介しきれなかったコメントも加えて、各賞を発表していきたい。では「観る将的名局賞」から始めよう。

1番注目を集めた対局は……

――「観る将的名局」のアンケート結果はこのようになりました。

投票数1位 ヒューリック杯棋聖戦第1局 渡辺明棋聖vs藤井聡太七段 26票
投票数2位 朝日杯将棋オープン戦準決勝 渡辺明名人vs藤井聡太二冠 16票
投票数3位 王位戦第4局 木村一基王位vs藤井聡太棋聖 6票

遠山 やはり藤井聡太さんがらみばかりですね。

深浦 そうですよねぇ。

――深浦先生は、棋聖戦第1局の立会人を務めておられましたが、何か印象に残ったことはありますか。

深浦 非常事態宣言が明けて初めてのタイトル戦。例年とは違うなかで、やはり気は遣いましたね。そんななか印象に残ったのは、控え室で藤井さんに会ったときの荷物の少なさでした。タイトル戦なのにリュックサックひとつといった感じなんですよ(笑)。

――普段とあまり変わらない(笑)。たしか和服が間に合わなかったんですよね。

深浦 渡辺さんのところに行ったら、やはり和服に着替えるためのトランクケースを用意されて、あと時計も準備されていた。この荷物の対比が面白かったですね。

深浦康市九段が立会人を務めたヒューリック杯棋聖戦第1局。藤井聡太七段(当時)にとって初のタイトル戦の舞台となった

――控え室の様子などはいかがでしたか?

深浦 終盤、連続王手が続く場面がありましたが、盛り上がっていましたよ。師匠の杉本さんはハラハラされていましたね。

――終局後の様子などは?

深浦 藤井さんはやはり大物で、淡々としていましたね。

――投票コメントをふたつほどご紹介します。

〈藤井さんをずっと応援しているファンとして待ちに待ったタイトル戦番勝負、その記念すべき第1局、最終盤、渡辺棋聖が勝負に出た角打ち。郷田さんの「勝負と行ったね~」からの王手ラッシュ、藤井さんの王様は捕まってしまうのか? それとも…秒読みの緊張感、ハラハラドキドキが続きます。そして安住の地にたどり着いた藤井さんの王様が穏やかに勝利を宣言する収束の美しさ…極上の盤上の物語がそこにありました〉(64歳/女性)

 

〈藤井聡太くんの初めてのタイトル戦。ワクワクで見始めましたが、最終盤の連続王手には本当に息を呑み、握った掌には爪痕がくいこむほどでした。解説とAIのおかげで観る将にもそのスリリングさがタイムリーに伝わった一局だったかと思います。それまでは「将棋の内容まではムリ!」と完全観る将を決めこんでましたが、この一手の意味を少しでも理解したいと指す将に転身。私の将棋ライフを変えた思い出の一局となりました〉(47歳/女性)