「観る将」の視点から将棋界の1年を振り返る「観る将アワード2020/2021」。後編となる本稿では「最優秀解説者」「最優秀聞き手」「ベストエッセイスト」「ベスト棋譜コメント」の4部門を発表していこう。
★★★
的確な解説をするプロ棋士のすごさ「最優秀解説者」部門
――続いて「最優秀解説者」を審査したいと思います。アンケートでは、同数で1位に2人の方が選ばれていました。
投票数1位 藤森哲也五段 14票
投票数1位 木村一基九段 14票
投票数3位 高見泰地七段 10票
――昨年は木村先生に投票が集まるなか、「わっしょい!」という名言を生み出した藤森先生が選ばれたんですよね。こんな投票コメントがありました。
〈ABEMA将棋トーナメントで「実況系解説」というジャンルを開拓しました。指し手をドラクエの呪文に例えるなど、分かる人には分かるというぎりぎりの線を仕掛けてくる面白さもあります。まるで古舘伊知郎のプロレス実況みたいです〉(42歳/男性)
遠山 あの4一銀も藤森さんが盛り上げたんですよねぇ。
――竜王戦の藤井vs松尾戦ですね。
遠山 私、ちょうど見ていたんですよ。藤森さんが盛り上げに盛り上げて「さあ、どうなる!」といった解説があったから、より藤井さんの一手が目立ったんですよ。「プロ棋士でもあれは指せない」といった感じで言ってたんですが、たしかにあれはプロでもなかなか指せない。ちょっと大げさかもしれませんが、将棋が詳しくない人にもすごさが伝わる解説をできる人は他にあまりいないと思います。
――やはり藤森先生と一緒に解説をやるときは気分が違いますか?
深浦 そうですねぇ。まあ、乗っかってやろうかなという感じですね(笑)。
――木村先生は、安定の人気ですね。コメントご紹介します。
〈とにかく話が面白い! そして分かりやすい! 初心者の視点で棋士の思考を解説してくれるので面白いだけでなく勉強になります。いつも明るい気持ちで解説を拝聴しています。高野五段との師弟解説も名コンビで和みました。対局も見たいですが解説も聞きたい、悩ましさを感じる棋士です(笑)〉(42歳/女性)
――「対局も見たいですが解説も聞きたい」というのは木村ファンの悩みでしょうね。高見先生も人気でした。
〈朝日杯で豊島将之竜王と藤井聡太二冠の対局時、瞬時に手を読まれて的確な解説をされた時、プロ棋士のすごさを痛感致しました。あんな数秒であれほどまで読んでしまうのは、さすがとしか言いようがありません。また、それを聞いてる人にも分かりやすいように丁寧に説明して下さり、非常に素晴らしい方であると思いました〉(21歳/女性)
遠山 高見さんに投票した人は、ほとんどこの朝日杯の準々決勝の対局に触れていますね。たった1回でこんなに魅了してすごい。