――ははは(笑)。去年、この賞を取られた山本先生はnoteが今でも評判ですね。
〈山本四段のnoteは最高です。今期の投稿では「気付くと僕は一人で肉を焼いていた。」が爆笑必至の記事でした。新人王戦の準々決勝という重要な対局に敗れてしまった山本四段ですが、その足で一人焼肉に行き、noteを書いて深夜の1時36分に投稿。文才がありあまっています〉(42歳/男性)
――あとは久保先生のツイッターとか渡辺先生のブログ。勝又先生のツイッターに遠山先生のコラムなどが挙がっていました。これも候補がたくさんあって迷うところですが……。
遠山 今回は上田さんですかね。
深浦 そうですね。票も集まっていますし。
――では今年度の「ベストエッセイスト」は、上田初美女流四段に決定したいと思います。
受賞の言葉(上田初美女流四段):
この度はベストエッセイスト賞に選んでいただきまして、ありがとうございます。
女流棋士として書いている文章を、多くの方が読んでくださり、何かを感じ取ってもらえる。これは皆さまが将棋を多角的な楽しみ方をされているからこそだと思います。
今後も色々な角度から将棋を楽しんでいただけたら嬉しいです。私も、将棋の楽しみを少しで多くご提供出来るよう、精進して参ります。
端的なコメントがワクワクする「ベスト棋譜コメ」部門
――最後は、将棋連盟モバイル中継の棋譜に添えられる観戦記者のコメントから印象深いものを選ぶ「ベスト棋譜コメ」部門です。こちらは、いくつか優秀作を紹介しながら、最後に大賞を選びたいと思います。まず、もっとも票を集めたのは、竜王戦2組ランキング戦の藤井聡太二冠vs松尾歩八段戦(57手)でした。
〈「20時1分、藤井の手はなんと駒台に伸びた。驚愕。見間違いではない。飛車を取る以外の手があるとは。恐ろしい捨て駒だ」
限られた字数で▲4一銀の凄さを伝えています。解説も含めるなら、終局図の上野六段の次のコメントです。
「この時代に生まれ、この手をリアルタイムで目撃できた、ただそれだけでなんて幸せ者だろうか」
棋士として、両対局者と▲4一銀に対する最大限の敬意を払った名言だと思います〉(49歳/男性)
遠山 これは端的なコメントですが、ワクワクしますよね。
――こちらは文記者が担当されていましたね。あとA級順位戦、佐藤康光九段vs佐藤天彦九段(14手)の対局の生姜記者のコメントをご紹介します。
〈「佐藤天は三間飛車に構える。ついに正体を現した」
天彦先生は飛車を振るのか…と固唾を飲んで見つめていた時のこの一文。
気持ちを鷲掴みにされた棋譜コメでした〉(59歳/女性)
遠山 飛車を振っただけですけどね(笑)。でもこうやって端的に書くのが大切なんですよね。
――ドラマも感じますね。次は竜王戦1組出場者決定戦の澤田真吾七段vs佐々木勇気七段(25手)の対局の潤記者のコメントです。
〈上座の譲り合いは観る将の大好物。潤記者の棋譜コメはその場の状況をありありと思い浮かべることができ、ひいては澤田真吾七段と佐々木勇気七段の人柄もうかがわれる文章だった。後で中継ブログにアップされた写真の佐々木勇気七段があまりにも棋譜コメどおりで爆笑した〉(47歳/女性)
遠山 上座の譲り合いは観る将の大好物(笑)。
深浦 名言ですね(笑)。