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観る将ファンが選んだ最優秀「解説者」「聞き手」は誰だった?

観る将ファンが選んだ最優秀「解説者」「聞き手」は誰だった?

観る将アワード2020/2021 #2

2021/04/25
note

深浦先生の「ぞうさん事件」

――お人柄もあるでしょうね。深浦先生への投票もありますよ。

〈2020年7月24日の竜王戦決勝トーナメント、藤井聡太棋聖vs丸山忠久九段戦での、武富礼衣女流初段とのやりとりが最高でした。千日手フラグに、藤井先生のバッグが象に見えるという「ぞうさん事件」など、とても面白い内容でした。もちろん解説も的確で、初心者にも非常に分かりやすくてありがたいです〉(45歳/男性)

――これ見ていましたが最高でした。

深浦 武富さんが笑い転げてくれたのが良かったです。「ぞうさん事件」っていうんですね、あれ(笑)。

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遠山 ずいぶんたいそうな事件に聞こえますね。

――及川拓馬六段への投票もあります。

〈3月23日の第34期竜王戦2組ランキング戦藤井聡太二冠-松尾歩八段の対局をAbemaTVで解説。大駒が派手にぶつかり合う局面で藤井二冠の攻め筋に浮上した4一銀について、難解な変化手順をひとつひとつ丁寧に追い、この銀のただ捨てが精緻な読みに裏付けられた絶妙手であることを示した。名局にふさわしい名解説〉(37歳/男性)

遠山 あの4一銀のあとがすごく難しいんですが、及川さんがいろんな変化をさらさらと解説するんですよ。あれはプロの技でしたね。それを隣で藤森さんが盛り上げると(笑)。

――解説役と盛り上げ役で(笑)。

深浦 役割がしっかりできていたんですね。

「実況系解説」で人気の藤森哲也五段 ©文藝春秋

――郷田先生の名セリフにも票が入っていました。

〈第46期棋王戦五番勝負第1局のABEMA解説でAIの示した候補手を「5万年生きていても考えないですね。美しくないですからね。人間が美しいと感じるのはすごく大事なことなんです」と一刀両断した解説。人間である棋士としての矜持と郷田九段の生き様が表れた名言として語り継いでいきたい〉(47歳/女性)

遠山 これは私のコラムでも触れたのですが、いいフレーズですよね。

――天彦先生も、これと似たニュアンスの名言を残されました。

〈局面や読み筋の解説の明快さ、多岐に渡る知識や教養に彩られた雑談の面白さ。加えて、天彦先生の解説は物の例えや言葉選びがいつも的確で初心者や観る将にもわかりやすく、毎回楽しくて飽きません。今期は「評価値ディストピア」という、これまた天彦先生ならではの新語(?)も生まれました。「神回」とも評されているこの解説。現在の将棋界が置かれている状況を、端的にこの一言で表現した天彦先生のインテリジェンスに1票です〉(48歳/女性)

遠山 この「評価値ディストピア」は、個人的には新語大賞ですね。ディストピアってちょっとネガティブな意味も入っていますよね。佐藤天彦さんは、評価値に支配されている世界はちょっと嫌だなという気持ちを込めているんでしょうが、言語能力が高すぎますよね。

深浦 自分は調べましたもん。「ディストピア」ってなんだ?って(笑)。ユートピアの対義語なんですよね。