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藤井聡太二冠が「総ナメ」した将棋大賞 記録だけではなく、プロがうなる盤上の妙技でも

藤井聡太二冠が「総ナメ」した将棋大賞 記録だけではなく、プロがうなる盤上の妙技でも

各部門の賞と共に、昨年度の将棋界を振り返る

2021/04/03
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 4月1日、2020年度の将棋界で活躍した棋士を表彰する、第48回将棋大賞が発表された。MVPにあたる最優秀棋士賞をはじめとする各部門の賞と共に、昨年度の将棋界を振り返ってみたい。

2020年度の将棋界はまさしく「4強」を中心に動いていた

 最優秀棋士賞は藤井聡太王位・棋聖の受賞となった。下馬評では渡辺明名人との一騎打ちになるのではと見られていた。記者投票の結果は8対5で藤井に軍配が上がったのは、タイトル数でこそ渡辺が上でも、棋聖戦五番勝負における直接対決の結果及び、一般棋戦の優勝数(藤井が銀河と朝日の2棋戦、渡辺はなし)が考慮されたのだろう。

藤井聡太二冠は、現在も連勝継続中 ©文藝春秋

 そうなると、事実上のナンバー2である優秀棋士賞が渡辺となるのも当然だ。またナンバー3とも言える敢闘賞は、目覚ましい活躍をした棋士に贈られる。こちらの候補としては豊島将之竜王と永瀬拓矢王座が考えられるところだが、やはりタイトル数及び叡王戦七番勝負での直接対決の結果が左右したといえる。

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 そして惜しくも上位3名には至らなかった永瀬も、後述する記録部門では2部門でトップに。このことからも、2020年度の将棋界はまさしく「4強」を中心に動いていたと言える。

 その4強全員が受賞したことのある賞の一つが新人賞だ。今年の新人賞は、池永天志四段が受賞。対局数の50局は年度5位、勝数の35は年度4位という好成績である。数字でいえば佐々木大地五段の52局、37勝がやや上回っているが、新人王戦優勝の実績が受賞に結びついたと言えるだろう。

 池永と佐々木は現在、お~いお茶杯王位戦の白組リーグに在籍中で、近々直接対決がある。新鋭同士の対局にも注目したい。

女流棋界は里見女流四冠が順当の受賞

 女流棋界に目を移すと、最優秀女流棋士賞は里見香奈女流四冠が6年連続11回目の受賞。いまさら言うまでもないが順当すぎる結果である。

里見香奈女流四冠 写真提供:日本将棋連盟

 続く優秀女流棋士賞は、山根ことみ女流二段が初受賞となった。2つのタイトル戦(女流王位戦、女流名人戦)に出場して、女流最多対局賞(43局)を受賞した加藤桃子女流三段となる可能性も考えられたが、17連勝を達成して(2020年度の最多)自身初のタイトル挑戦(女流王位戦)に結びつけたことが山根の受賞の決め手となったか。