春休みが始まった。

 昨年から、長期休みは決まって、遊具がなく、人も少ない公園で幼稚園のお友達と遊んでいる。この春も例に漏れず、娘たちは元気に毎日を遊びたおしている。

 本当に毎日で、しかも公園通いも5年目を過ぎると時間軸がちょっとおかしくなっているので、1日の遊ぶ時間が長い。この原稿を書いている日は昼前から夕方まで、実に7時間の外遊びをし、寝かしつけまで諸々をこなしてからキーボードを叩いている。たまには自分を褒めてあげたい気持ちにもなる。

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「手伝おうとしても拒絶されてしまうパパ」側の気持ち

 その甲斐あってか、成長著しい2歳の次女は、それまで5分に1回は転んでいたのが嘘のように、突然ほとんど転ばなくなった。よたよたと歩いていた次女は、もういない。力強く地面を蹴って走るまでに成長したのだ。子どもの成長はいつも、嬉しくてせつない。

桜の下を走る次女 ©上田初美

 こうやって書いていると、娘たちはママにべったり懐いていると思われるかもしれないが、我が家は2人とも断然パパ大好き派なのだ。特に次女に至っては、歯磨きも「パパ!」手を繋ぐのも「パパ!」寝かしつけも「パパ!」である。

 なので、よくある「手伝おうとしても拒絶されてしまうパパ」側の気持ちが、私はよくわかる。

 長女の時も次女の時も、夫には産後1か月、必要な対局を除いた、仕事や研究会はすべて断ってもらった。いわゆる男性版の育休を自発的に取ったのだ。

 将棋指しは個人事業主という位置づけなので、育休というものは厳密には存在しない。よって何も保障はされないが、数か月の収支よりも、共に子どもを育てる基盤を作ることを優先した。

部屋の電気を暗くし、更にミュートにした対局時計で10秒将棋

 長女の時は特に、初めの3週間はとても重要だった。3週間というのは、私が個人的に感じた、最初に来る心身の疲れのピークだ。

 目を離したら死んでしまいそうな赤子を、朝も昼も夜も、1日ずつ毎日育てていくのがどれ程大変なのかを同じ立場で認識できたのは大きかった。

 蛇足だが、寝ている娘が起きるのを2人して恐れ、部屋の電気を暗くし、更にミュートにした対局時計で10秒将棋を指していたのは、振り返ると流石に2人ともどうかしていた。

 男性版の育休の話題になると、短い期間で取得できても意味がないという意見もあるが、1日の生活がどういうものなのかの実体験としてイメージができるだけでも、意識が変わるのではないかと思う。大変だろうから早く帰ろうとか、そういう発想は実体験がなければ浮かびにくいだろう。

 私達が特殊なパターンであることは重々承知しているが、育休は夫婦のためにも、子どものためにも、取れるならば取った方が良いと、個人的には思う。