一部で「読む将棋ファンの聖地」と呼ばれている書店がある。それは池袋にあるジュンク堂書店だ。

 将棋の棚は、通常時でも4本半(一部、囲碁エリアを侵食している)。ジャンルも、入門書から詰将棋、戦略書、雑誌、読み物、マンガまで手広い。棋士らのサイン本も多く、特設棚が設けられていることも少なくない。

ジュンク堂書店池袋本店副店長(兼将棋棚担当)の中崎悠人さん ©文藝春秋

 書籍の仕入れから棚の整理まで担当しているのは、ジュンク堂書店池袋本店の副店長の中崎悠人さん。「藤井システム」を生み出した振り飛車党の第一人者・藤井猛九段を信奉する筋金入りの将棋ファンでもある。Twitterでは将棋が好きすぎる「エヌさん」としても知られている。

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 そんなジュンク堂書店池袋本店ではいま、『師弟―棋士たち 魂の伝承』(光文社文庫)、『絆―棋士たち 師弟の物語』(マイナビ出版)で将棋界の師弟たちを描いた野澤亘伸さんの写真展が行われている。1階、2階の2フロアにわたって大きなパネルが所狭しと並べられている様子は圧巻だ。

1階の展示風景 ©文藝春秋

『師弟』で第31回将棋ペンクラブ大賞を受賞した野澤さんは、もともと事件報道やタレント写真などを手がけてきた本職のカメラマン。魂の込められた写真には定評がある。

 エヌさんこと中崎悠人副店長に聞いた。

写真をパズルのように組み合わせ……

――今回、野澤亘伸さんの写真展を始めた経緯を教えてください。

中崎 もともと、3年前に『師弟』が出た時に読んで傑作だと感動したんです。以前いた店舗で拡販していましたが、ちょうど『師弟』の文庫化を知り、なにかご一緒にできないかと思ってお声がけしたのがきっかけです。少し遅れて『絆』と野澤さんのルポが掲載されている文春将棋ムック「読む将棋2021」も刊行されたことから、さらに規模を拡大しました。

中崎副店長が苦労した「パズル」の成果

――写真をセレクトした基準を教えてください。また、苦労したこと、悩んだことはありますか。

中崎 できるだけすべての写真を使いたかったのですが、すでに掲出している写真がある方の別のショットなどは泣く泣く今回はセレクトしませんでした。断腸の思いです。場所は限られており、またサイズのバリエーションも付けたかったので、A1・A2・A3をパズルのようにうまく組み合わせるのに大変苦労しました。レイアウトをつくるのに半日、前準備で半日、実際のパネル掲出でさらに半日かかりました。