1ページ目から読む
2/2ページ目

 また4月1日付で、西山朋佳女流三冠が奨励会を退会して女流棋士へ転向した。これまでは女流棋士ではなかったので受賞の対象とならなかったが、今後は有力な候補となるだろう。西山が2021年の年度末時点で持てる可能性のあるタイトルは、現在保持する三冠+白玲の4つ(他は進行の関係上、年度末に間に合わない)だが、里見の連続受賞を阻止するか、どうか。

4年連続の勝率8割で藤井二冠が史上初の快挙

 記録四部門は最多対局が69局の永瀬、最多勝利が44で藤井と永瀬の同時受賞、最高勝率は0.846の藤井、最多連勝は澤田真吾七段の14連勝となった。改めて藤井が勝ちまくっていることがわかる。4年連続の勝率8割は昨年に自身が記録した3年連続を超える、史上初の快挙である。

 また連勝賞は年度末時点に連勝が継続されていると次年度に持ち越しという規定がある。藤井は2020年度を17連勝でフィニッシュしているので、2020年度の受賞とはならなかったが、新年度早々に有力な連勝賞の候補者となった。

ADVERTISEMENT

朝日杯将棋オープン戦では、3度目の優勝を果たした藤井聡太二冠 ©文藝春秋

 新手や定跡の整備に貢献した者に贈られる升田幸三賞は、大橋貴洸六段が受賞。受賞の対象となった「耀龍四間飛車」は振り飛車の新機軸ともいえる作戦。実戦でも多くの棋士が採用している。受賞した大橋は、「受賞を知らされた時は驚きましたが。名誉ある賞で光栄です。耀龍四間飛車が一つの戦法として認められたのがうれしいですね」と語る。

 戦法誕生について「もともとはアマチュア時代に振り飛車定跡を覚える段階で、美濃囲いにアレンジを加えたら」というのがきっかけだったという。3年前のNHK杯戦、対三浦弘行九段戦にて、より深めた研究で勝ち「ファンの方から声をかけていただき、ありがたかったです」とも。

 そして升田幸三賞特別賞は、藤井の「△3一銀」が対象に。昨年の棋聖戦第2局(▲渡辺―△藤井)で現れた指し手で、「将棋ソフトを超える一着」として話題になった。名局賞は棋聖戦第1局(▲藤井―△渡辺)、名局賞特別賞は竜王戦2組▲藤井―△松尾戦だが、名局賞と名局賞特別賞を同一の棋士が受賞するのは史上初のことである。タイトル数や勝率など、目に見える記録だけではなく、プロがうなる盤上の妙技でも、藤井が頭一つ抜けていることがわかる。

 そして、藤井の師匠である杉本昌隆八段が東京将棋記者会賞を受賞。2020年度は師弟にとってもっとも充実した1年となったが、新年度はどうなるだろうか。

◆ ◆ ◆

 この記事の筆者・相崎修司さんは文春将棋ムック『読む将棋2021』にも寄稿しています。

 人気棋士のインタビュー、コラム、コミックが一冊にまとまった、観る将ファンに向けた「読む将棋」の決定版(全144ページ)。現在、好評発売中です。

文春将棋 読む将棋2021

 

文藝春秋

2021年3月9日 発売

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。