新潟県新発田市で2014年4月、当時20歳の女性Aさんが遺体で発見された事件について、殺人などの罪で起訴された喜納尚吾被告(39)に対し11月18日、新潟地裁(佐藤英彦裁判長)は無期懲役の判決を言い渡した(求刑・死刑)。喜納被告は起訴事実を否認し、被告人質問でも「全く関わっていない」と関与を否定し続けていたが、同地裁は、Aさんを連れ去り、わいせつ行為に及び、そして殺害した犯人は喜納被告であると認定した。フリーライターの高橋ユキさんが初公判や被告人質問、判決までを傍聴した。(全2回の2回目/前編から続く)
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Aさん事件の直前に起こした“事件”
検察官「この事件の1ヶ月前にも、わいせつ略取未遂事件を起こしていますよね?」
被告「はい」
11月2日の被告人質問で喜納被告が一瞬認めたように、彼はAさん事件の1ヶ月前に別の事件を起こしており、検察側は、Aさん事件は喜納被告による連続した一連の事件のひとつだと見ている。
既報の通り、新発田市では2013年から2014年にかけ、若い女性が事件に巻き込まれる事案が立て続けに起こった。確定判決によれば、そのうち2013年8月2日、3日と続けて発生したBさん(当時30代)、Cさん(当時10代)に対する強姦、同年11月22日に同市在住のEさん(当時22)が行方不明となり、翌14年4月に遺体で発見された強姦致死、そして2013年12月にFさん(当時20代)が運転していた車に乗り込んできた男に連れ去られそうになったという、わいせつ略取未遂事件、この4件は喜納被告によるものだ。
これらの事件での裁判員裁判は2015年に同じく新潟地裁で行われていたが、喜納被告は、亡くなったEさんの強姦致死事件のみ、最後まで認めず、最高裁まで争い、2018年にようやく一審の判決通りの無期懲役が確定した。
強姦致傷の事件を起こした当時の“心境”は
今回の公判でも証拠となっている前科に関する報告書によれば、2002年には放火未遂で保護観察付きの執行猶予判決が言い渡されたものの、2003年に強姦致傷や建造物等以外放火などの罪で、前刑での執行猶予が取り消され服役。出所後の2013年7月に新潟県新発田市に移り住んでから、Bさん、Cさん、Eさん、Fさんに対する事件を起こしたのだった。
またBさん、Cさん事件の翌月、同市内のアパート駐車場で車4台が燃える火災が発生し、うち1台からDさん(当時24)の遺体が見つかっている。遺体の肺や気道には煙を吸い込んだ形跡がなく、現場には油を撒かれた跡があり、死後に車を燃やされた可能性をうかがわせた。当初、現場に残された微物のDNA型は喜納被告のものと矛盾しないと報じられていたが、Eさん事件と同様に関与を否定し続け、逮捕も起訴も見送られている。
過去に被告が関与を認めていた事件について、反省の気持ちを持ったことがあるのか検察官は問い質したが、被告はこれすらも「覚えていない」を繰り返した。
検察官「沖縄で強姦致傷の事件を起こした時あなたは執行猶予期間中でしたね。判決を受けてから半年後……せっかく執行猶予だったのになぜまた悪いことを?」