新潟県新発田市で2014年4月、当時20歳の女性(本文ではAさん)が遺体で発見された事件について、殺人などの罪で起訴された喜納尚吾被告(39)の裁判員裁判が10月17日から新潟地裁(佐藤英彦裁判長)で始まった。

 喜納被告側は起訴事実を否認し、弁護人は「そもそも事件があったのか」と事件性も争う姿勢を見せたが、検察側は本件が喜納被告による殺人事件であると主張。フリーライターの高橋ユキさんが公判を傍聴した。(全2回の2回目/前編から続く)

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Tシャツが胸の上までめくれあがっていた

 今回の裁判員裁判で争われているAさんの件についても、新発田市で女性が立て続けに事件に巻き込まれていた時期に発生している。Aさんが行方不明になったのは、Fさんが車で喜納被告に連れ去られそうになった事件翌月の2014年1月。小川でAさんの遺体が発見されたのは、強姦致死の被害者であるEさんの遺体が見つかる直前の、2014年4月3日だった。

 Aさんの死亡については、新潟県警は当時から喜納被告の関与を疑っており、捜査本部を解散せずに捜査を継続してきたという。2019年秋にようやく関与の裏付けが取れたことから、2020年2月、岐阜刑務所で服役中だった喜納被告が逮捕されるに至ったのである。

 起訴状には、Aさんが運転していた車に喜納被告が乗り込んでから場所を移動させて事件を起こしたとあり、確定判決と同様の手口だと検察側は見ているようだ。また公判で明らかになった証拠によれば、遺体発見時にAさんは服を着たままであった。服を着たままの状態で発見されたEさんとの共通項ともいえる。竹やぶの下にある小川で発見されたAさんの遺体は、着ていたピーコートとTシャツが胸の上までめくれあがって肌が露出しており、ブラジャーはつけておらず、これは遺体の近くから発見された。

写真はイメージ ©iStock.com

Aさんの死因について、検察側は「他殺」と主張

 殺害方法について複数の可能性が起訴状に記されているのは、事件が起こってから遺体が発見されるまでに日数を要したことが影響していると思われる。小川の水面から露出している部分が白骨化していたことにより、死因の特定に時間を要しているからだ。

 今回の裁判員裁判で証人として出廷した元新潟県警捜査一課の刑事が法廷でこう証言していた。

「死因を特定するために司法解剖しましたが、最初のAさんの死因は『不詳』だった。ですが現場の状況から、事件性は高い。セカンドオピニオンとして別の先生にも意見を求めて死因を特定させる必要があると思いました」

 こうして死因は溺死または窒息死という意見を得たうえ、現場の状況などから、Aさんは事故に巻き込まれたのでもなく、自殺でもなく、他殺であると検察側は主張している。