新潟県新発田市で2014年4月、当時20歳の女性が遺体で発見された事件について、殺人などの罪で起訴された喜納尚吾被告(39)の裁判員裁判が10月17日から新潟地裁(佐藤英彦裁判長)で始まった。喜納被告側は起訴事実を否認し、弁護人は「そもそも事件があったのか」と事件性も争う姿勢を見せたが、検察側は本件が喜納被告による殺人事件であると主張。フリーライターの高橋ユキさんが公判を傍聴した。(全2回の1回目/後編に続く)
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「全く身に覚えがありません」
喜納被告にとっては7年ぶりの新潟地裁での裁判員裁判となる。刑事裁判も初めてではない。にもかかわらず、裁判の冒頭で住所や年齢など問われる人定質問において、いきなり詰まった。
裁判長「本籍は?」
喜納被告「え~……岐阜市……」
裁判長「あ、それは今の住所ね? えっと、どこの刑務所にいますか?」
喜納被告「え~……」
裁判長「岐阜(刑務所)にいるのかな?」
喜納被告「……えっと~……」
本籍も住所も、なぜかしどろもどろになって答えていたが、罪状認否では一転、きっぱりと力強く、二度言った。
「全く身に覚えがありません」
今回の殺人容疑で逮捕された2020年当時、喜納被告は岐阜刑務所で服役中だった。強姦致死などの罪で2015年に新潟地裁で無期懲役の判決が言い渡され、2018年にこれが確定していたことによる。現在も服役中という立場であるためか、上下グレーの作業服に坊主頭で法廷に現れた。証拠資料と思しき書類が綴じられたA4のファイルをいくつか持参し、それを膝の上に乗せて、しきりにページをめくっている。そんな彼を4人もの職員がとり囲み、じっと見つめていた。
弁護人は喜納被告の無罪を主張
喜納被告は2014年の1月15日の明け方、新発田市内において、通勤中だったAさん(当時20)の運転する車両に乗り込み、暴行、脅迫、あるいは甘言を用いて車を発車させ、同県内でAさんの陰部を触るなどのわいせつ行為に及んで加療1週間の怪我を負わせたのち、同市内の小川内で、Aさんの顔面を水中に水没させる、あるいは頸部を圧迫するなどして殺害したという、わいせつ略取誘拐、強制わいせつ致傷、殺人の罪に問われている。