新潟県新発田市で2014年4月、当時20歳の女性Aさんが遺体で発見された事件について、殺人などの罪で起訴された喜納尚吾被告(39)に対し11月18日、新潟地裁(佐藤英彦裁判長)は無期懲役の判決を言い渡した(求刑・死刑)。喜納被告は起訴事実を否認し、被告人質問でも「全く関わっていない」と関与を否定し続けていたが、同地裁は、Aさんを連れ去り、わいせつ行為に及び、そして殺害した犯人は喜納被告であると認定した。フリーライターの高橋ユキさんが初公判や被告人質問、判決までを傍聴した。(全2回の1回目/後編に続く)
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「全く身に覚えがありません」
今回の裁判では喜納被告は、2014年1月15日の明け方、新発田市内において、通勤中だったAさんの運転する車両に乗り込み、暴行、脅迫、あるいは甘言を用いて車を発車させ、同県内でAさんの陰部を触るなどのわいせつ行為に及んで加療1週間の怪我をおわせたのち、同市内の小川内で、Aさんの顔面を水中に水没させる、あるいは頸部を圧迫するなどして殺害したという、わいせつ略取誘拐、強制わいせつ致傷、殺人の罪に問われていた。
喜納被告は「全く身に覚えがありません」と自身の関与を否定していた。Aさんの死亡が事件によるものかどうかすらも争っていた。だが検察側は、Aさんの死亡は事件によるもので、その犯人は喜納被告であると主張していた。確かに公判では、Aさんと喜納被告を結びつけるものがいくつか存在していること、また事件性を窺わせる状況であったことが明らかになっている。
証拠などによれば、当時、製菓工場に勤務していたAさんは2014年1月15日の朝3時45分にスマホのアラームで起床。4時に車でアパートを出た。ところが出勤時刻である4時40分にAさんは姿を見せず、欠勤の連絡もない。その後も連絡が途絶え、所在が不明となる。
喜納被告の混合DNAが検出
一方の喜納被告はその日、仕事を終え、同僚と飲酒したのち、ラーメン屋に移動する途中の3時過ぎに、1人だけその場からいなくなった。
同日8時30分ごろ、新発田市駅周辺から離れた同市内の山間部で通行人が車を発見する。のちにAさんの車と判明したそれは、道路から外れ、のり面に転落し、木に衝突する形で停まっていた。この車のハンドル部分から採取した微物のDNA型鑑定ではAさんと喜納被告の混合DNAが検出されている。