この日の同地域の積雪は「20~30センチはあったかもな」(同)という。寒さをしのぐために公民館で待つように伝えたにもかかわらず、男は落ち着きなく公民館を「出たり入ったり」していたことから、急いでいると女性は感じ、向かって来ているタクシーの方へと道案内したのだそうだ。
作業着に坊主頭の被告の答えは…
当日の出来事は、2014年4月3日、公民館から少し離れた小川でAさんの遺体が発見されたのち、県警の訪問を受けて「そういえばあの若え男来たなあって」(同)、タクシーを手配した住民と話して、思い出したのだという。
その住民は「若え男」の顔写真の確認を警察から依頼された際、10枚以上の中から、喜納被告の顔写真を選んだと公判で語っている。タクシー運転手の当時の日報からも、事件当日の朝に“地元民ではない若い男”がタクシーで新発田市駅近くまで乗車したことは確かなようだ。
さらに当日朝8時2分、喜納被告は当時同居していた元妻に電話をかけて、ある同僚の名を挙げ「同僚の家で飲んでいた」と説明した(元妻の証言より)というのだが、この同僚は「この日は被告は泊まっていない」と証言している。事件当日、ラーメン店に向かう際に姿を消してから朝まで、喜納被告と行動を共にしていた知人はいなかった。
ところが当の喜納被告は、11月2日の被告人質問でも、初公判と同様に「自分は関係ない」という姿勢を貫いた。それも「覚えていない」のだという。初公判と同じようにグレーの作業着に坊主頭で、淡々と答え続けた。
「記憶はないです」「覚えてないです」
弁護人「当日未明のこと、同僚の証言によると、飲みに行った後にラーメン屋に行ったが、あなたが来なかった。翌日の仕事の際に『来なかったじゃないか』と聞くとあなたが『(飲んだ店から)歩いて帰った』と言っていた、と。そういうことがあった記憶はありますか?」
被告「記憶はないです」
裁判長「覚えていないということですか?」
被告「覚えてないです」
弁護人「あなたの元妻は法廷で『事件当日、被告が朝帰りしたお詫びにタバコを買ってきてくれたんじゃないか』と話していましたが、朝帰りのお詫びにタバコを買った記憶は?」
被告「ないです」
このようにほとんどを覚えていないと述べながら、きっぱりと否定できる記憶も残っていたのか、事件に関係するようなことは「覚えていない」と答えるのではなく、否定していた。