1ページ目から読む
2/4ページ目

 加えてAさんの車が発見された頃、近辺で喜納被告らしき男の姿が目撃されていた。男は住民にタクシーを呼んでくれるよう頼み、公民館までタクシーを手配。10時半ごろ、到着したタクシーに乗り込んだ男は、被告が当時住んでいたアパート近くの市街地でタクシーを降りた。検察官によれば、被告はその近くの商店で、当時同居していた元妻の好きだったタバコ2つとライターを購入し、アパートに帰宅したという。

朝に現れた「見たことない若え男」

 実際にこの山間部に向かい取材をすると、当時、喜納被告らしき男と会話した女性と会うことができた。女性はその日の朝、犬の散歩をしていたところ「見たことない若え男」を見かけたという。近隣にスーパー等もなく、ひとの往来もほとんどない。地元住民以外が歩いていれば、確かに記憶には残るだろう。

山間部近辺の風景 ©高橋ユキ

 農作業の手を止め、敷地の物干し竿に吊るしてあった、ツナギを指差して女性は言う。

ADVERTISEMENT

「ちょうど、あんなような服着てた。紺色のような紫色のような。冬の間にさ、そんなに着ねでさ、上着も着ねでさ。変わった人が来たなと思った。編み上げのブーツ履いてんの。なんにも持たねだね。『公衆電話あるか』って聞いてきたけど、公衆電話なんかこの辺にあるわけねえ」

 その「見たことない若え男」は女性に公衆電話の場所を尋ねてきたが、近辺に公衆電話はない。そう答えると男は「電話を貸してくれ」と言ってきたという。

「携帯は電池が切れてて」

「だから『携帯電話あるだろう』と聞いたんだけど『携帯は電池が切れてて』って言うから」(同)、近くの民家まで連れて行き、そこの住民がタクシーを手配した。

男がタクシーを待っていたという場所 ©高橋ユキ

「その後『タクシー来るまで公民館で待ってれ』って(言った)。でも本人は早く帰りたいわけだ。ここから1分でも早う、どっか行きてえわけだ。公民館には風除室あるけさあ、そこの中に待ってれと言ったけど、出たり入ったり。待ってらんねえさあ。おれもまた、どうなっただろうなと、また犬連れて見に行ってみたけども、まだ公民館のあたりにいたから、『ほんだら、こっちから行くのと、タクシー向こうから来るので、かち合わすけ、そうすればいい』って(男に言って)一緒に途中まで歩いた」(同)