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後手番だったら全敗でもおかしくなかったと思っています

――初対局では佐々木さんが勝ち、2局目では藤井さんが勝っています。迎えた3局目は2019年6月の王座戦決勝トーナメントでした。王座戦では、その前年に藤井さんがベスト4入りしていたこともあり、注目の集まった一局でした。

佐々木 実際に指してみると、藤井君の妥協しない指し方は感じましたし、前評判通りの中終盤の切れ味とか深さとかもありました。でも初手合いの時点ではそれまでの印象と極端に変わったということはなかった気がします。

 藤井君の一番の脅威は若さと成長力ですが、将棋自体を凌駕されたとは思いませんでした。ですが、3局目の王座戦では全体の読みの深さと正確さを感じましたね。結果こそ幸いしましたが、感想戦でこちらはヘトヘトなのに、向こうはまったく疲れていない感じで鋭い読みを披露されました。その時の新聞解説が佐々木勇気七段でしたが、自分をそっちのけで二人の感想戦という感じ。タフさが足りないことを思い知らされましたね。

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 藤井君に勝ち越しているのは先手番を3局引けて、相掛かりに持ち込めたのが大きかったです。自分はけっこう先手後手を気にするので、後手番だったら全敗でもおかしくなかったと思っています。実際あるイベントで藤井君と指した時には、後手番で悲しくなるくらいの内容で惨敗しました(苦笑)。

 

悪くはないけど、よくもない

 現在(2月6日時点)の佐々木の通算成績は179勝78敗の0.696。これは勝ち数と勝率のいずれにおいても、同時に四段昇段を果たした都成竜馬六段と井出隼平四段の数字を上回っている。ただ、都成と井出がすでに経験している「棋戦優勝」が佐々木にはまだない。佐々木はこれまでのプロ生活についてこう語る。

佐々木 悪くはないけど、よくもない。勝率はある程度残せても、大きなところで勝てていないから。その殻を破れずに今に至っています。大一番に勝てないのでは無駄に率が高くてもしょうがない。7割は勝ちつつ、かつ大事なところでも勝ちたいですね。奨励会時代にしのぎを削った同世代に負けないよう、一歩ずつ進んでいかなければと思います。

 大きなところで勝つ、そのチャンスと言えるのが2021年の2月から始まる、お~いお茶杯第62期王位戦の紅白リーグだ。白組に入った佐々木はそこで優勝すれば紅組の優勝者と挑戦者決定戦を行い、勝つとタイトル戦七番勝負の舞台に躍り出る。佐々木の王位リーグ入りは4度目で、相性のいい棋戦と言える。

佐々木 リーグ表を見ると、当たり前とはいえ強豪しかいませんし、また過去の王位戦ではリーグに入れても、そこで結果を残せていないので……。

―― 初の王位リーグ入りを果たした第59期は1勝4敗でしたが、その後の60期と61期は3勝2敗と勝ち越しています。

佐々木 前期は負けた相手がいずれもシード組の2人(豊島竜王と永瀬拓矢王座)でした。今期の白組はシード組に永瀬先生と羽生先生(善治九段)がいますが、この2人に勝てるかどうかだと思います。もちろん他の3名(近藤七段、長谷部浩平四段、池永天志四段)も大変な相手ですが。今年度はトップ棋士に勝てていないので、王位リーグは試金石になると思います。