勝負所で集中力が切れないように
佐々木は以前、あと一歩というところで檜舞台への登場を逃したことがある。19年度の第45期棋王戦だ。挑戦者決定戦まで勝ち進んだが、本田五段に敗れた。王位戦と棋王戦には持ち時間4時間という共通点がある。
佐々木 4時間の将棋は勝率が高いから、向いているのではと思いますね。王位戦に関しては師匠が王位を取っていたこと、小学生時代に教わった藤本裕行さん(元奨励会二段、現在はフリーの観戦記者)が王位戦の担当記者をされていたことなどの縁もあるのかもしれません。棋王戦に関しては挑決まで行けたのは運がよかったですが、そこまで行ったら挑戦しなくてはいけなかったと思います。挑決の1局目を勝った後、勝てば挑戦が決まる2局目が消極的で、手が縮こまっていた感じでした。
その後の五番勝負は、もちろんスコアの行方は気になりましたし、本田君も相掛かりをやるので戦型の細かい部分をそれぞれ一つの課題として見ていました。もちろんあと1つ勝っていればという悔しさもありました。
―― 調子がいいときの状態は、いつもと何が違うのでしょうか。
佐々木 雑念がなく将棋に集中できているときは、調子がよくいつもより変化を深く読めている気がします。例えば藤井君との王座戦はそうだったかもしれません。終わったあとは全く頭が回らないくらいに使い切った実感がありました。とはいえ対局中に将棋以外のことを考えることも多いですよ。
―― どんなことですか?
佐々木 先日は誰と遊んだ、何を食べた、などですね。さすがにまだ局面に変化がなく、比較的早い時間帯の話ですが。
―― 頭を休ませるという面もありそうですね。
佐々木 ずっと盤を見ているのは難しいので、席を外して会館内を少し歩くなどの気分転換はします。勝負所で集中力が切れないようにと考えています。
――現在の将棋界は渡辺名人、豊島竜王、藤井二冠、永瀬王座の「4強」時代と言われています。今後どのように目標を設定していきますか。
佐々木 タイトル戦にからめるようになればうれしいですが、現状の自分ではまだ足りません。棋王戦は対戦相手が調子を落としていたなど、運がよくて挑決まで行けた部分もあると思っています。ただタイトルまで遠くても、本戦トーナメントや挑戦者決定リーグに入れればチャンスは来ると思うので、まずはそれを目標にしています。現在は将棋ソフトの存在も含めて、勉強法を一つ変えればチャンスが来てもおかしくないという意識はあります。それを逃さないようにしたいですね。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
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佐々木大地五段のインタビュー「『生きる希望』だった将棋で狙う『次なるチャンス』」の全文は、文春将棋ムック『読む将棋2021』に掲載されています。
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