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オリックスが優勝したのに、いまひとつ気が晴れない理由に関する一考察

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/11/08
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ずっと想像していた「オリックスが優勝した時の俺」とはどこか違う気がする

 さてそんな中、ちょっと変わった視角から取材してくれる記者さんも、勿論、いる。そしてそんな中で考えさせられる質問が一つあった。「先生、ずっとオリックスが優勝しない、だから気が晴れない、ってぼやいて来たじゃないですか」「うん、ぼやいて来た」「じゃあ、優勝したら気が晴れましたか?」。そこで頭を抱えて考えた。優勝は嬉しいし、嬉しいに決まっている。でも今の自分の状態は、ずっと想像していた「オリックスが優勝した時の俺」とはどこか違う気がする。

 想像していたのは、25年ぶりの優勝、自分史的には子供の頃、応援していた南海ホークスを含めて、「生まれて初めての応援してきたプロ野球チームの優勝」で喜びを爆発させ、これまでの辛いファン生活(というほどの偉そうなものではない)下に培われた、鬱積した思いが一掃されるような状態だった。でも、先のコラムでも書いたように、実際に訪れた自分の状態は、もっとテンションの低いものだった。これまでのファン生活で培われた思いが一掃されたか、といえばやはり違う気がする。オリックス・バファローズはオリックス・バファローズだから、まだ何か悪い事が起こりそうな気がするのだ。

 そしてふと気が付いた。現実にはチームはリーグ優勝を果たし、今はCSのセカンドステージを控える状態だ。シーズン当初の多くのファンの目標が「CS進出」だったことを考えれば、もう十分すぎるほど十分な訳で、だから「悪い事」なんて起こりようがない。それでもまだどこかに不安が残るのは、結局は、自分が過去の「悪い思い出」から十分抜け出しておらず、チームを信じ切れていないからだ。選手やスタッフはあれだけ頑張って成果を出しているのに、こんな状態じゃダメだよなぁ。

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 だから考えた。強いチームのファンは勝つことに慣れているけど、僕たちはまだそれに慣れていない。問題があるとすればそこにある。だったらチームが勝っていく中で、僕たちファンも一緒にこの新しい状況に慣れていけばいい。25年ぶりになる日本シリーズが「久しぶり」なのは勿論、CSのセカンドステージだって、オリックスファンは「全員が初体験」なんだから、慣れていない方が当たり前だ。無理する必要は何もない。そして、何事も「初体験」の時が一番楽しいんだから。「初体験」だから二回目はないんだし。

 そして強いチームに慣れるチャンスはこれからたくさんある。リーグ優勝を果たし、CSを勝ち抜き、日本シリーズで日本一になれば、僅か1シーズンで「頂点」を3回も経験できる。そうすれば、クリスマス頃には僕たちだって、立派な「常勝球団のファン」になれるに違いない。

 え、そんな事言って、CSであっさり敗れるんじゃないか、やっぱり心配だって? 大丈夫、優勝のアドバンテージに山本由伸。「1勝1由伸」のアドバンテージがあるんだから、心配する必要は何もない。ロッテファンの皆さんには申し訳ないけど、びっくるするくらい、あっさりと勝たせてもらいますよ。

今年はあっさりと勝たせてもらいますよ

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