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世界ランキング圏外ばかりの日本の大学、このままでいいわけがない

2018/05/11
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注目は体験や探究を重視した主体的学習

 私立の中高一貫校や、塾・予備校業界は、いち早くこうした流れに対応しています。たとえば、コンビニに入っていく人の映像を見せ、「なぜその人は隣のスーパーではなくコンビニに行ったのか」といった問題が数年前から入試でも出題されるようになってきました。知識だけでなく、情報や体験を基に状況を読み解き、思考する力を問うているんですね。

 文科省が実施している、小学6年生と中学3年生の全児童生徒を対象にした「全国学力・学習状況調査」。結果が公表されるとメディアで順位付けされることもあり、対策が過熱して競争主義に拍車をかけていると私はこの全数調査を毎々批判しています。それでもこの結果と、良い成績を残した学校の教育内容を照らし合わせていくと興味深い。体験や探究を重視した主体的な学習を行っている学校は成績がいい、という傾向が見えてきます。高校まで広げても、探究学習などに力を入れていて、大学受験で優秀な成績を残している、という例がいくつもある。ただ、そこで「トップ大学合格のために、体験学習重視の学校に子どもを入学させる」となってしまっては本末転倒ですが。

©iStock.com

 私も面白い取り組みをしている学校は積極的に紹介するようにしています。たとえば京都市立堀川高校では、1999年から「探究科」を設置。高校1年生から、生徒が自ら課題を設定して探究する、いわば自由研究のような授業があり、生徒は定期的な発表を経ながら最終的には研究を論文としてまとめます。自分が探究したい課題のために、高1でも高3の数学を勉強する生徒もいる。指導には教員だけでなく、京都大学の大学院生がアシスタントとして入ったりもします。

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 ぜひメディアの方々には、こうした新たな「学力」養成に向けて実践に精を出している学校をもっと取り上げてほしいですね。積極的に地域ごとの興味深い学校を紹介し、シリーズ化して全国の注目校を取り上げていく。そうした企画が増えれば、私を含めた読者にとっても、ランキングの見方や、新たな「学力」のあり方を考えさせてくれる、絶好の契機になるはずだと思います。

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