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世界ランキング圏外ばかりの日本の大学、このままでいいわけがない

2018/05/11
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 受け身から能動へ、学力の基準が転換を迎えている。2020年の教育改革以降、生徒や児童はどう取り組んでいくのがよいのか。教育評論の第一人者である筆者が今後を占う。(出典:文藝春秋オピニオン 2018年の論点100)

東大は世界ランキング46位

 これからの社会で必要とされる「学力」は、従来の日本の学力観とはまったく違う――これは私が常々主張していることです。つまり、OECD加盟国で実施されている「生徒の学習到達度調査」(PISA)のように、生活や社会活動での「活用力」が問われる時代になってきた。見通しを持つことが難しい社会情勢の中で、マニュアル通りの対応では解決できない、“正解”のない課題に取り組む力が求められてきています。

 にもかかわらず、日本では相変わらず、詰め込み・暗記中心型の学力観が根強い。偏差値に基づいた競争主義も、まだ大きな影響力を持っています。子ども4人を東京大学の医学部に入学させた“東大ママ”が、いまだにこれほど注目されるわけですから、時代錯誤も甚(はなは)だしいと感じざるを得ません。

 その意味で、毎年春に各メディアで発表される、東大への合格者数が多い高校を順位付けする「東大合格者数ランキング」は、いかに日本の学力観が遅れているかの象徴と言えますね。確かにこうしたランキングは読者にとってわかりやすく、特に受験を控えた子をもつ親御さんならば、つい手に取りたくなる気持ちもわかります。だからこそメディアも毎年大々的な特集を組むのでしょう。

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東京大学を象徴する「赤門」 ©文藝春秋

 ならば一案として、国内の「東大合格者数ランキング」と一緒に、「世界の大学ランキング」も併載してはどうでしょうか。これはイギリスの教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』が毎年発表しているものですが、2017年9月に発表されたランキングでは、東大は前年の39位からさらに後退し、46位となっています。京大が74位で、他の国内の大学は200位圏外ですよ。さらに、アジアの中でも日本は首位から陥落。近隣諸国の優秀な留学生にとって、自国の大学のほうが研究機関として優れているという状況ですから、今後は人材も集まりにくくなるでしょう。