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決算がはっきりと語るFF11の「成功」

 FF11はシステム設計もよく練られていました。ポイントは、日本と米国、欧州のプレーヤーを同じサーバーにしたこと。狙いは、日米欧の時差を利用し、サーバーのピークタイムを均一化することでした。サーバーを効果的に活用することでコスト削減を図ったのです。

 一方で、収益面はどうでしょう。FF11を1年間遊ぶと1万5000円(30日で約1300円×12カ月)を超える計算になり、パッケージ2~3本分に相当します。長く利益に寄与してきました。

 スクウェア・エニックスのオンラインゲーム事業の業績が公開されたのは、約1年半後の2003年度の中間決算。売上高は約38億円、営業利益は約10億円でした。

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 当時の決算短信では、FF11について「拡張ディスク(ジラートの幻影)の発売以降、順調に会員数は増加を続け、国内最大級の規模にまで成長し、安定した事業基盤を確立いたしました」と説明しています。

 

 2004年3月期の通期(1年間)では、オンライン事業の売上高は約89億円、営業利益は約23億円でした。さらに翌年の2005年3月期の売上高は約139億円、営業利益は50億円となっています。出してみないと売れるか不明なパッケージゲームとは違い、月ごとに安定収益があるのは強みになっていったのです。利益率の高さもポイントでした。

 同社の決算(2003年3月期)で、FF11のパッケージの出荷数は34万本でした。当時、FFシリーズは200万本の売り上げが期待できたので、2割程度の数値に批判もありました。しかし、長期的視野に立てばどちらが収益に寄与したかは指摘するまでもないでしょう。FF11は20年間、収益に貢献しているのです。

 

FF11のむかえる「21年目」

 ゲームとしての面白さとビジネスの構築。サービスが長期間提供できるのは、この両面がそろってこそです。また、昔はパーティープレーが必須でしたが、今では1人でも遊べるよう変わったように、システムも柔軟に変化しています。これもオンラインゲームの魅力でしょう。

 20年間人気を維持したことについて、サービス開始時から開発に関わり、現在は開発チームのトップをつとめるスクウェア・エニックスの松井聡彦プロデューサーに人気の理由を尋ねたところ、次のように説明してくれました。

 20年にわたってサービスを続けられた理由について、考えれば考えるほど「幸運に恵まれた」からと思わずにはいられません。若かりしころには(といっても30代半ばだったとおもいますが)、必要なものは「覚悟」だなんてとんがったことを言った黒歴史もありますが……。

 あの時に、あのメンバーで開発しローンチできたこと。運営、裏方のスタッフに恵まれたこと。今から振り返ると「幸運」としか説明できないですよね。とはいえ、我々もただ座して「幸運」を待っていたわけではなく、「幸運」を逃さないように、さまざまな努力をしていました。

 FF11は、スクウェア・エニックス(当時のスクウェア)の、威信をかけた全力のプロジェクトでした。開発要員だけでも4タイトルのチームを結集しましたし、通信や運営などスクウェア・エニックスにノウハウのなかった部署は、乞うて経験豊富なスタッフを集めました。

 質的にも量的にも大変でしたが、開発者としてはワクワクして笑ってしまうほど挑戦的なプロジェクトでもありました。皆、苦しんで楽しんで制作し運営していたことも、20年続けることができた大きな理由だと思います。

 そして、これが最も大きな理由だと思っているのですが、とてもとてもよい冒険者に恵まれたことです。楽しむ才能のあるプレイヤーが多かったと言い換えてもいいでしょう。熱心なFF11プレーヤーさんのお話をうかがう機会が時々あるのですが、皆さん、冒険者同士での素敵なエピソードをたくさんお持ちでした。開発が用意する物語だけでなく、冒険者同士で紡ぐ奇跡のような物語もある。そのようなヴァナ・ディールだからこそ、20年間にわたって、冒険者の皆さまに支えていただけたのだと考えています。

 サービス21年目に突入するFF11が、どこまでサービスを継続できるのか注目です。

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記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。