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平成生まれ同士の初タイトル戦となったのは…

 昭和生まれ同士の初のタイトル戦が第11期棋聖戦なら、平成生まれ同士の初のタイトル戦は2018年の第59期王位戦、菅井竜也王位-豊島将之八段のシリーズである。このシリーズ以降、平成生まれ同士のタイトル戦は7期行われ(内訳は竜王戦1期、王位戦2期、王座戦1期、叡王戦3期)、今回の叡王戦、藤井-出口戦は8期目だ。

かつて初の平成生まれ同士によるタイトル戦で相まみえた菅井竜也八段(写真左)と豊島将之九段(右)。写真は今年3月3日のA級順位戦にて ©相崎修司

 そして間もなく始まる棋聖戦の藤井-永瀬拓矢王座戦が9期目となり、同じく藤井がタイトルを保持する王位戦で10期目となることが確定している。改めて、出口に話を聞いてみた。

「挑戦が決まってから、色々と忙しくなりました。中一日で対局するというのは、これまで経験しなかったことです。タイトル戦を戦うということについては、やはり和服着用と9時開始ということで、普段の対局とは異なっていると感じます。

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 和服の着心地ですか? 指す時に影響することはないですけど、立ったり座ったりするときの違和感がまだ慣れていないですね。多くの方から激励を受けたので、挑戦だけで満足せずに、期待に応えたいですね」

出口若武六段は27歳。奨励会時代には三段ながら、新人王戦決勝で藤井との三番勝負を行っている (写真提供:日本将棋連盟)

 第1局は惜しくも敗れたが、次局以降の巻き返しに期待したい。新時代の将棋界の活性化のためには、藤井だけではなく現在の10~20代の棋士の活躍が大いに求められるはずだ。

「出口さんの指し方、振る舞いには注目しています」

 最後は若手時代にタイトル戦を経験したことについて語った、屋敷九段の言葉で締めたい。

「タイトル戦は檜舞台です。当時は実力がついていってないところもありましたが、第一人者の中原先生とタイトル戦で戦えたのは、今の自分にとっても貴重な経験として生きていると思います。

 若いうちに経験するのはもちろんいいですが、年を重ねてからタイトル戦にでてくるのもすばらしいと思います。弟子の伊藤沙恵も女流名人を取りましたが、やはりたくさんのタイトル戦を指してきたことが貴重な財産になったと思います。

 藤井聡太さんはもはや第一人者ですが、そこに挑む出口さんの指し方、振る舞いには注目しています。叡王戦1局目も堂々とした将棋を指していましたので、いいタイトル戦になりそうです。今後も次々と若手がタイトル戦に出てくるので、それに対して、藤井さんがどのように対応していくのか楽しみです」

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