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ファンをも勇気づける“勝っても負けても心に刺さる”オリックス中嶋監督語録

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/09/11
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ひねくれやユーモアに満ちた粋なエール

 紹介したのはほんの一例に過ぎないが、中嶋聡の発する言葉はいつも多彩でユーモアに溢れ、同時に本音を語る力強さが滲み出ている。こんな指揮官はなかなかいるものではない。

 これほど率直に本音を語る指揮官の場合、質問する記者やアナウンサーも大変だ。不勉強な質問や紋切り型の問いかけに対して表面的な社交辞令を絶対に返してはくれないからだ。試合後の勝利監督インタビューで質問者が大前一樹さんや濱野圭司さんや田中大貴さんではない時のあの緊張感と言ったらそれはもう(笑)。あれもオリックスファンの楽しみの一つと言えるのではないだろうか?

 逆に言えば、真剣にオリックスについて勉強しているプロフェッショナルの記者さんにとって中嶋聡という取材対象者はさぞかし魅力的に映っていることだろう。彼は恐らく「記者会見の準備」的な作業を一切していない。彼にとってはチームや采配について何を聞かれても怖くないからだ。なぜなら日々誰よりも真剣にオリックス・バファローズというチームや選手のことを考え続けているから、何を聞かれても答えは自ずと脳内から溢れ出してしまう。そのあまりに自然体すぎる中嶋監督の姿に選手もファンもたまらない魅力を感じてしまうのだ。

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 もう一つ、中嶋監督の「言葉」は知性で隠された優しさに溢れている。彼の言葉には明確なルールがある。

「活躍した選手に関してはジョークや嫌味も交えて茶化すこともOK」

「全力で前のめりにプレーした結果の失敗やミスに関しては絶対に責めない」

「無気力なプレー、消極的なプレー、自分勝手なプレーは厳しく指摘する」

 要は中嶋監督の言葉は全て選手やチームを鼓舞するためのエールなのだ。しかも無粋なおためごかしではなく、含羞やひねくれやユーモアに満ちた粋なエール。あれを言われたら選手はたまらないだろうと思う。ファンである僕ですら「この人を胴上げしたい。絶対にしたい。」と思ってしまうのだから。

 そんな中嶋監督の魅力的な試合後コメントが聞けるのも今季あとわずか。僕らファンは全力で選手たちを応援し、試合後の中嶋監督のコメントを待つのみだ。その先に待つ歓喜を信じて。そして今年こそ超満員の京セラドームであの人を胴上げしよう。僕たちオリックスファンにこれほど幸せな時間を取り戻してくれたあの背番号78を今年こそ全員で。

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