文春オンライン
文春野球コラム

「マウンドにあがるときは毎回…」ソフトバンク・和田毅が新人リポーターに語ったメンタルの話

文春野球コラム クライマックスシリーズ2022

2022/10/10
note

 皆さんは、最近なにかにチャレンジしていますか??

 大人になると、“挑戦”できる機会はどんどん減るように思います。また私の場合、子供のころの挑戦といえば、新しい扉を開くことへの楽しみやワクワク感を素直に感じていましたが、大人になってからの挑戦はそれに関わるたくさんの人達の顔が浮かび失敗することへの恐怖や緊張、プレッシャーのほうがはるかに大きいです。

 だけど、プロ野球選手は、私なんかと違うんだろうな。3年前の私は、そんな風に考えていました。

ADVERTISEMENT

 読者の皆さん、はじめまして。

 ホークス主催試合を全試合中継する「スポーツライブ+」の試合終了直後、終わったばかりの試合を振り返り深掘りしていく「HAWKS AFTER GAME SHOW」という番組のリポーターをしています。野崎あいかです。

筆者・野崎あいか

 私は番組リポーターに就任して今季が3年目になりますが、就任直後に初めて覚えた単語は“タッチアップ”で、基本的なルールすら危うい状態でした。

 まずはスコアブックの書き方を教わり、それからはルールや選手に関する情報などを自分なりに勉強してきました。それでも野球の奥深さは底知れず……。自分の発言が的外れでないか、視聴者の皆さんに間違ったことを伝えてしまっていないか、そんな不安を感じない日はありません。

 プロの世界を映し、皆さんに届ける“プロ”の現場。

 そこに自分も新人リポーターとして加わった頃、その空気に圧倒されながらも自分の役割を果たさなければと必死だった私の気持ちを、勇気付けてくれた出来事があります。それは番組内で初めて選手と会話をしたときのこと。つまりそれは、私にとって生まれて初めてプロ野球選手と直にお話をする機会でした。

一生忘れない和田投手との初めての会話

 出演してくださったのは和田毅投手でした。

 新人だった私は、メジャーも経験しているベテラン選手! そんな凄い人と話せるんだ……! どうしよう……! そんなふうにソワソワしていたのを覚えています。実際に和田投手にできた質問は2つほどでしたが、その中でメンタル面についての質問をしたときです。

 和田投手は真っ直ぐな視線で、こう答えてくれました。

「マウンドにあがるときは毎回緊張しています。もちろんです!」

 照れを隠すように優しく笑いながら、とても素直に答えてくださったのです。

和田毅

 そして、こう続けてくれました。

「でも、緊張しないとダメだとも思っています。その中で1球1球、初回から気持ちを込めて投げるという、自分のやることは常に変わらない」

 あんなプレッシャーの中、マウンドに立つプロの選手たちは、普通とは違う鋼のメンタルをもった“エラい人たち”なのだと思っていました。ましてや和田投手です。だけど、和田投手みたいなベテラン選手でも緊張するし、こんな新人リポーターに対しても言葉を選びながらとても丁寧に誠実に答えてくださったことに感激したのは一生忘れないと思います。どこかで自分とは全く違う世界の人たちだと思っていた選手の皆さんが、当たり前だけど自分と同じ人間で、その人間として当たり前の気持ちや感情と向き合いながら、たくさんの人たちに感動を与えるプレーをしているんだ。

 不安や緊張は悪いことではなく、目の前の仕事としっかり向き合えている、そして集中できている証拠。

 プレーに関してはよく分からないけど、選手のバックグラウンドや人柄、人間らしさなどはファンの皆さんにしっかり伝えていきたいと目標がはっきりした出来事でした。最初の頃はせっかく現地から伝えているのにどこか第三者のような違う場所から現場を見ているような気持ちだったけど、ちゃんと現場の一員として自分の仕事と向き合えるキッカケになりました。

文春野球学校開講!