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「心臓移植、肝臓移植を続けるか再考する時期…」東京女子医がハイレベル医療から撤退を示唆 患者の命を“見捨てる“経営陣の非情さとは?

「心臓移植、肝臓移植を続けるか再考する時期…」東京女子医がハイレベル医療から撤退を示唆 患者の命を“見捨てる“経営陣の非情さとは?

東京女子医大の闇 #9

2022/10/01
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辞令は令和5年3月末までの2年間だったが「任期は1年」通告で退職

 まず、A前特任教授は、カナダの大学で小児集中治療の専門医として活躍していたが、一時帰国して、岩本理事長と面会している。その際、具体的な報酬額の約束を取り付けたことを、複数の同席者が証言した。待遇も分からずに、カナダから帰国するのは不自然だろう。

 規定の給与を支払ったと主張しているが、岩本理事長の専属運転手(岩本氏の甥)が得ていた月額66万円の半分以下だ。手当もボーナスも社会保険もない。女子医大の医師給与は、一般病院の約5~7割と低いため、大半の医師が週2回程度の外勤(他院でのアルバイト)をしている。しかし、小児ICUは24時間体制の勤務で、外勤が難しい。それで規定の割増給与を事前に約束してもらったという。だが、女子医大はこの約束を守らなかった。

 前特任教授の辞令は、令和3年4月から令和5年3月末までの2年間だった。(※掲載画像を参照)しかし、退職願には「人事より任期は1年であると連絡を受けたため」と記されている。

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 これは、"特任教授の任期は1年、今年度の契約更新はしない"と丸学長から通告されたからだ、とA前特任教授は周囲に語っていた。

A前特任教授の辞令と退職願

責任転嫁、論点ずらしの回答でも、教授は「私たちには大きな意味があった」

 説明会の終わりに、挨拶に立った岩本絹子理事長は、こんな事を口にした。

「私個人的には、前病院長らの業務遂行があまり適切でなかったために、今般こういう問題が色々起きているというふうに感じております」

 医療安全の要であるICUと小児ICUは、前病院長が中心となって設立した。一方、それを崩壊させたのは、岩本理事長や丸学長などの現経営陣であり、見えすいた責任転嫁だろう。経営陣の回答は論点ずらしが目立ち、質疑応答の時間も取らずに説明会は一方的に終了した。

 それでも、今回の行動に意味はあると、質問書に名を連ねる教授は周囲に語っている。

「400人を超える教職員が署名した『質問書』を岩本理事長に出した理由は、女子医大の中に危機感を抱く人間がいることを示すためです。だから、私たちには大きな意味があった。このままでは医療崩壊が完全に起きて、患者さんに迷惑がかかってしまいますので、次の手を打ちます」

 女子医大の広報課には取材を申し込んだが、期限までに回答はなかった。

 危機的な状況を、組織の中から立て直すことができるのか。新たに始まった現場からの動きを引き続き注視していきたい。

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