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川内 イオ
2018/01/31

「結果を出せばどんな働き方でもいい」――ヌーラボ創業者・橋本正徳の型破りな仕事論(後編)

地方発、規格外のイノベーター #2

福岡発のIT企業・ヌーラボ。プロジェクト管理ツール「Backlog(バックログ )」の運営などで知られるスタートアップ。“破天荒”で“カオス”な生き方を目指した企業家・橋本さんは、如何にしてヌーラボを世界企業へと押し上げたのか――。前編〈「福岡で最も成功したスタートアップ」を率いる異色の起業家——ヌーラボ創業者・橋本正徳 #1〉の続きです。

 

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 2004年に創業したヌーラボの追い風となったのは、起業の前年と起業の年、橋本さんが出版した2冊の書籍だった。派遣社員時代、橋本さんはエンジニアとして学んだことを自身のウェブサイトにまとめていたのだが、そのサイトに目を留めた出版社から声をかけられて出版した。この2冊が名刺代わりとなり、産声を上げたばかりの福岡のスタートアップに東京や福岡の企業から続々と受託開発の仕事が舞い込んだ。当時の東京にも数多くのITスタートアップは存在したが、依頼は増え続けた。橋本さんは、こう振り返る。

「東京だと僕らのような会社はいっぱいあって、数あるうちのひとつにしかならないと思うんです。でも福岡には競合があまりいなかったので、福岡のヌーラボとしてエッジの効いた存在になって、目立てたんだと思います。あと、技術力では東京のスタートアップにも負けないという自負がありましたし、そのうえで頼まれた以上のものを作りたいという気持ちはいつも持っていましたね。クライアントを驚かせたくて、頼まれていないものまで作ったこともあります。委託業者なので良くないことなのかもしれないけど(笑)」

 書籍、福岡、サービス精神。この3つの要素の掛け算によって、ヌーラボはうまく船出することができたのだった。

時代を先取りする先見の明

 現在では80万人以上が利用する国内最大級のサービスとなったプロジェクト管理ツール「Backlog(バックログ )」も、「福岡」がきっかけで生まれた。

「東京の仕事が多くて出張が増えたんです。でも出張は時間が取られるし、なるべく減らしたいという思いもあって2006年にBacklogを作りました。既に似たようなツールがあったんですけど、いかにも業務用で雰囲気も暗かったので、もっと明るく楽しく使えるツールがあったらいいなと思って」

Backlogの画面(画像提供:ヌーラボ)

 有料契約数も6000を超え(昨年11月時点)、ヌーラボの主力製品になっているいまでは考えられないことだが、リリース当初、橋本さんいわく「プチ炎上」した。Web上の掲示板に「福岡の小さなスタートアップが作ったツールに、企業のプロジェクトに関わる大事な情報を預けるなんてありえない」という内容のネガティブな書き込みが連なったのだ。

「当時のコミュニケーションはメールが中心で、クラウド的なASPサービス(インターネット経由でソフトウェアを提供するサービス)でナイーブな情報を扱うものがほかになかったので叩かれたんだと思います」

 ネット上でbacklogに批判が殺到する様子を見て「直接の開発者ではなかったから、面白かった」というのがいかにも橋本さんらしいが、それはbacklogに対する自信の表れでもあったのだろう。実際、この「プチ炎上」によってクローズアップされた結果、ユーザー数は右肩上がりで増えていった。