「福岡で最も成功したスタートアップ」と呼ばれるヌーラボ。80万人(昨年11月時点)が利用する国内最大級のプロジェクト管理ツール「Backlog(バックログ)」や、約280万人のユーザーのうち海外比率86%超のオンライン作図・共有サービス「Cacoo」などを運営する。創業者の橋本正徳氏は、IT業界では異色のキャラクターと経歴で知られる。そのユニークな歩みを振り返りながら、ヌーラボ成功の要因を探る。
はい、写真撮ります!とカメラを構えると、奇妙なポーズでおどける橋本正徳さん。レンズごしにそのひょうきんな姿を眺めるだけで、異色の起業家だと実感する。
本社・福岡のほかに、東京、京都、ニューヨーク、シンガポールに拠点を持ち、新たにアムステルダムにもオフィスを開設予定。80万人(昨年11月時点)が利用するプロジェクト管理ツール「Backlog」や、約280万人のユーザーのうち海外比率86%超のオンライン作図・共有サービス「Cacoo」などを開発。グローバル100名ほどの社員のうち、3割超が外国籍。
――まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで世界展開を進めるこの企業、ヌーラボを率いるのが橋本さんだ。近年、「起業都市」として注目を集める福岡で、まだその胎動すらなかったであろう2004年に創業。今では最も成功した福岡発のスタートアップのひとつと呼ばれる。
福岡のITコミュニティでは知らぬ人のいない橋本さんだが、そのユニークなキャラクターと同様に、経歴も変わっている。その独特の性格とキャリアが今のヌーラボにどうつながっているのか、歩みを振り返ろう。
30分以上椅子に座っていられなかった
「授業中に立って歩く子どもって社会問題になってると思うんですけど、僕はそのはしりみたいなものかもしれません。今もそうなんですけど、物理的にお尻が蒸れるのがイヤで、30分以上椅子に座っていられないんですよ。だからいつも先生に怒られて、小学3、4年生の頃は僕の机だけ教卓の横にベタ付け。でも、だいたい自分の席にはいなくて、教室の後ろで正座させられていました(笑)」
福岡で生まれ育った橋本さんは自他ともに認める「落ち着かない子ども」だったが、唯一、時間を忘れて夢中になったのがファミリーコンピューター、いわゆるファミコンでプログラムが組める機器、ファミリーベーシックだった。祖父から譲り受けたファミリーベーシックで簡単なプログラミングをしたり、音楽を作ることにどっぷりはまったという。この趣味は、中高生になっても続いた。
「高校の時は、親が買ってくれたPC-9801というNECのパソコンで遊んでいました。特に、PCで音楽を作るのが好きでしたね。当時はロックのバンドが流行っていたけど、僕はヒップホップ、テクノ系が好きで同級生と音楽の好みが合わないから、家にこもってひとりで音楽を作っていました(笑)」