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「結果を出せばどんな働き方でもいい」――ヌーラボ創業者・橋本正徳の型破りな仕事論(後編)

地方発、規格外のイノベーター #2

2018/01/31
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そんなにみんな破天荒じゃない

 ヌーラボを導いてきた橋本さんのこの独特の「感覚」は、経営にも生かされている。ヌーラボは国内外の7カ所に開発拠点があり、「リモートワーク」をしている社員も多く、なかには週に1回だけ出社して、あとは離島の自宅で仕事をしているという女性もいるという。今回訪問した福岡の本社もカジュアルな服装をしている人ばかりで、スーツ姿でかしこまった雰囲気の人は見当たらない。

 これは、「結果を出せば、どんな働き方でもいい」という橋本さんの方針による。橋本さんには直感的な確信があるのだ。

「僕が東京に住んでる時、破天荒に生きようと思っても、後先を考えちゃってそんなに破天荒になれなかったじゃないですか。それと同じで、勝手にやれ、カオスにでもどうにでもなれと思っていても、そんなにみんな破天荒じゃないんですよ。だから、結果を出せばどう働いてもいいと言っても、だいたい想像できる範囲内の自由で、えー!みたいな驚きはあまりないですね。みんなちゃんと後先を考えて、安全柵のなかにとどまる」

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 一定の縛りがないと社内の規律を守れないと考えている経営者にとって、橋本さんの言葉は耳を疑うようなものだろう。

 コミュニケーションの面でハードルが高そうにみえる外国人の雇用にしても、やはり橋本さんの感覚はユニークだ。もともと海外に慣れていたわけでもなく、英語が得意なわけでもない。2009年頃に受けたTOEICのテストは200点前後で、いま受けても「500点はとれないかも」と明かす。そうであれば外国人に対して構えてしまってもおかしくはないが、橋本さんは外国人と一緒に仕事をすることに「憧れていたんです」と明かす。

「破天荒に生きるぞと思っていた東京時代、よくクラブにいったんです。その時に、いまでいうパーティーピープルみたいな軽い雰囲気のイベントのオーガナイザーが、外国人のDJを連れてきて、彼らとコミュニケーションを取っている姿を見て、カッコいいな~と思っていたんですよ。だからいま、外国人の社員と英語で話をしていると、時々、俺、あの頃のオーガナイザーっぽいわ~と思いますね。それって素敵じゃないですか(笑)」

革新的なサービスが生まれた理由

 起業家にはギラギラとした野心家やロジック重視の理論派が多い印象があるが、橋本さんのキャラクターはまったくの自然体で対照的だ。もしかすると、競争が激しい東京ではなく、子どもの頃から慣れ親しんだ地元・福岡にいたからこそ、他人の目を気にせず、ありのままに振る舞い続けることができたのかもしれない。そうしてリラックスして仕事を楽しんでいたから、BacklogやCacooなど斬新なアイデアが生まれたのだろう。

 ヌーラボはこれからも世界展開を推し進めるが、変わらず福岡が拠点となる。

「福岡にいることがそんなにメリットになると感じたことはないんです。そもそも、他の街と比較して住んでいるわけでもないし。でも福岡発で東京や世界を目指すときに、地元の応援を得ることができるのはすごくありがたいですね。東京に行く気はありません。若い頃にだいぶ楽しんだから、もういいや。子どもも地元の高校に入っているから、引越ししづらいし(笑)」

写真=川内イオ

「結果を出せばどんな働き方でもいい」――ヌーラボ創業者・橋本正徳の型破りな仕事論(後編)

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