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中国軍とロシア軍は同じ問題が…中国の侵攻は2035年まで無いと語る台湾の「軍師の目」

台湾の孔明 #2

2023/02/11
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中国はミサイルの3分の2しか稼働できなかった

――あれ? 私が日本で聞いたニュースでは、人民解放軍があの大規模演習で撃ったミサイルは9発だったはずですが?

 ああ、日本の自衛隊は中国のミサイル発射数を「9発」と発表していますが、レーダーの角度の限界ゆえ、日本領内からは台湾の新竹あたりまでしか捕捉できないのです。われわれ台湾の観測では、中国が実際に撃ったミサイルは11発でした。

 それはさておき、中国側は本来「16発」を撃つ予定だったらしいのです。国営放送局CCTVが演習当日の午後3時に準備したニュース原稿では、そう書かれていたことがわかっています。この数字は当然、軍から事前に提供されたものであるはずです。

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春節加強戦備のなかでおこなわれた、中華民国海軍陸戦隊の実弾を用いた訓練。ロケットランチャーも登場した。筆者撮影。

――CCTVは中国共産党のプロパガンダ媒体の筆頭格ですから、この数字をミスすることは考えにくいですね。ミスがあったとすれば、それは軍の側で想定外の事態があったのでしょう。

林 そういうことです。本来、人民解放軍は16発を撃つはずだったのに、なんらかの不具合があって5発が不発になった可能性が高い。用意したミサイルのうち、約3分の1がまともに稼働しなかったとすれば、これはかなり深刻でしょう。ミサイルのみならず、通常兵器なり防弾ベストなりの装備についても、「いざ実戦」となったときにちゃんと準備ができるのか。彼らには課題がありそうです。